北京で5月中旬に行われたトランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談は、米中関係が世界の行方を大きく左右することを改めて印象づけた。イラン、ウクライナ、ガザと戦火の止まない世界の窮状をめぐって、おそらくは“静かな激論”が交わされた違いない。
中南海を散策する両首脳を伝える映像から伝わってくるのは、日頃の饒舌ぶりとはうって変わって口数が少なく、時に心愉しまざる雰囲気を感じさせるトランプ大統領。それとは対照的に、常にドッシリと落ち着いた“大人の風”を漂わせていた習主席――。2人の対照的な振る舞いから、米中関係の現状、両首脳の国際的立ち位置が浮かび上がってくるようだ。
今回の米中首脳会談に続く中ロ首脳会談、さらには近く実現と報じられている平壌訪問と続く一連の“外交的祝祭”を敢えて長い時間軸で捉えてみるなら、やはり米中両大国間の「G2関係」が、しかも習主席ペースで、より鮮明になった、ということではないか。
トランプ大統領にとっての“意中の人”
世界経済をリードする巨大企業は“我が掌中にあり”とばかりに、トランプ大統領は世界を代表する30の大企業の最高経営責任者(CEO)を引き連れて来たと、北京で胸を張った。実際には30人にはおよばなかったようだが、米中首脳会談を伝える台湾のTV情報番組で、ある解説者が「まるでトランプ大統領率いるカネ儲けのためのビジネス・ミッションだ」とコメントしていたが、その通りの陣容と言っても決して言いすぎではないだろう。
ともあれ大統領同行のCEOの顔ぶれからは、たしかに彼らが率いる超巨大グローバル企業の圧倒的な影響力は存分に見て取れた。大統領同行の主要閣僚を押しのけるようにして北京で存在感を発揮していた。
ここで注目したいのがエヌビディア(NVIDIA)を創業し、いまや「世界のAI戦争における唯一の武器商人」と呼ばれる台南生まれの黄仁勲(ジェンスン・フアン)である。
当初、彼は同行者名簿には記載されていなかったようだが、トランプ大統領の強い要請を受けて急遽アラスカに向かい、給油中の大統領専用機「エアフォース1」に滑り込んだとのこと。この報道から彼に対するトランプ大統領の“執心”の強さが窺えるが、それはとりもなおさずシリコンと数式を支配する「技術の武器商人」が国家の覇権に大きな影響を与えていることの表れではなかろうか。
なお彼は帰国する「エアフォース1」に同乗することなく北京に留まり、一般市民と会話を交わし、市井の生活を楽しんだようだ。ここら辺りから、ジェンスン・フアンとしてではなく、漢族の血を引く黄仁勲としての振る舞いが強く感じられる。

