2026年5月26日(火)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2026年5月26日

 米政府倫理局(U.S. Office of Government Ethics)が2026年5月に公開した財務開示資料によれば、ドナルド・トランプ大統領の資産運用をめぐる新たな倫理問題が浮上した。同局の開示によれば、大統領名義の信託口座では26年第1四半期だけで3600件を超える証券取引が行われ、その総額は少なくとも2億2000万ドル、多ければ7億5000万ドル規模に達するとされる。取引対象には、Nvidia、Microsoft、Amazon、Meta Platformsなど、政権の政策によって業績が左右されうる企業が多数含まれていた。

エヌビディアのジェンスン・フアンCEO(右)はトランプ大統領の中国訪問にも同行している(AP/アフロ)

 大統領は頻繁な株取引について特に問題視してはおらず、最近では有名な「くら寿司USA」の株式を取得しているとして、話題になった。ここで重要なのは、「違法かどうか」と「倫理的に適切かどうか」が必ずしも一致しない点である。米国法では、大統領と副大統領は一般の連邦職員に適用される利益相反規制の一部から除外されている。

 つまり、大統領が個別株を保有すること自体は直ちに違法ではない。また、近年は連邦最高裁の新たな判例により大統領の在職中の不法行為に関しては、免責特権が大幅に拡張されている。したがって、今回暴露されたような問題については、法的には問題にならないという見方が一般的だ。

 だからといって問題がないわけではない。大統領は、関税政策、防衛予算、規制緩和、対中政策などを通じて、企業価値を直接動かしうる立場にある。その人物が同時に当該企業の株主であれば、「政策判断は国益のためか、それとも私益のためか」という疑念が常につきまとう。政策は国益のためであっても、明白なインサイダー取引によって私利を得ているとなれば、倫理的疑念を抱かれることは避けられない。

米国大統領の慣例から外れる

 トランプ陣営は、「取引は第三者の資産運用会社による完全裁量であり、大統領本人は個別の売買を知らない」と反論している。これは法的に見て、形式上の弁護としては成立する。だが、専門家の多くは、それでは不十分だと見ている。

 なぜなら、大統領自身が「どの企業の株を持っているか」を知っているだけで、無意識に政策判断が影響される可能性があるからである。通常、歴代の大統領はこの問題を避けるため、ブラインド・トラスト(資産内容を本人が把握できない信託)や、広範な投資信託への移行を選んできた。


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