2026年5月26日(火)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2026年5月26日

 この問題に関しては、トランプ氏はその慣例から外れている。そのきっかけとなったのは一期目の就任時点であり、通常であれば大統領就任にあたって、家業であるホテル、カジノ産業を売却して公私混同を避けるべきであった。だが、当時のトランプ・オーガニゼーションは、事実上の債務超過状態であり、売却は不可能ということから問題は曖昧なまま放置されたのである。

 今回の問題に戻ると、例えば「外形的利益相反」という問題がある。例えば、大統領がある企業の最高経営責任者(CEO)と会談し、その直後にその企業株が上昇すれば、それだけで市場には「政権との近さが利益になる」というシグナルが送られる。そうなれば、企業側は政策への影響力を求めて政権に接近し、政治と市場の境界が曖昧になる。仮に、その会談の予定が組まれた時点で、大統領サイドがその企業の株を安値で仕入れていたら、これは露骨なインサイダー取引になってしまう。

トランプ支持層が離れない理由

 今後の焦点は三つある。第一に、議会が追加の説明責任を求めるかどうか。第二に、大統領の資産開示制度そのものの見直しが進むか。第三に、有権者がこの問題をどこまで重視するかである。

 支持者にとっては「合法な資産運用」にすぎなくとも、批判者には「公職の私物化」に映る。この認識の分断そのものが、現代アメリカ政治の難しい状況を反映している。

 しかしながら、なかなか理解し難いのが、特にトランプ政権のコア支持者の姿勢である。経済的にも、また社会的な名誉という意味でも、個々に深い現状不満を抱えた支持者たちは、大統領の露骨な公私混同をどうして許すのだろうか。少し考えただけで、インサイダー取引にしても、ファミリー企業への利益誘導にしても、もっと怒っても良さそうなものだ。

 エプスタイン問題ではあれほど揺れ動き、大統領から離れていった部分もあったのだが、この利益相反の問題では、コア支持者の中には動揺の様子は見えない。長男、次男などを含めたファミリーの行動にも、事業以外の例えば暗号資産「トランプ」立ち上げによる資金獲得になどについても、コア支持者たちは批判しないどころか、礼賛を惜しまない。これは一体どういった心理なのであろうか。

 恐らく彼らには、今でも歴代大統領らエスタブリッシュメント達には、「必ず隠された悪の側面」があると信じているのであろう。そして、トランプ氏にはそうした「知的な権力者達の偽善」と戦う正義のヒーロー像を重ねている。また、一期目時点ではそれこそ物理的な資金不足で苦労したことも見てきている。

 そのため、二期目になって資金面で一転して自由になったトランプ家の資産状態などには、批判どころか称賛を惜しまない。反対に、議会の調査委員会や官公庁の証券監視などの制度には、「しょせんはエリートの作った偽善」だという疑いの目しか向けないのである。


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