NTTと三菱マテリアルがリサイクル新会社を設立する。多くの人は「またESGか」「またリサイクルか」と受け止めたかもしれない。しかし私は、このニュースに日本の資源戦略の危機と可能性を見た。
私はかつてロシアをはじめ、世界中のメタルスクラップを三菱マテリアルに供給していた。銅、貴金属、レアメタルを含む廃材である。当時から三菱マテリアルは世界有数のリサイクル製錬会社だった。しかし、それでも十分ではなかった。
なぜなら世界中が同じ原料を奪い合い始めていたからである。いま、その競争はさらに激しくなっている。
「NVIDIAの次に儲かるのは銅かもしれない」
世の中はNVIDIA、GPU、生成AI、データセンターに熱狂している。だが私は、AI革命の本当の主役は半導体だけではないと見ている。本当に足りなくなるのは電力である。そして電力を運ぶのは銅である。
データセンター、送電網、変圧器、冷却設備、モーター。
そのすべてに銅が使われる。これまで銅はベースメタルと呼ばれてきた。しかし、AI時代の銅は、もはや単なるベースメタルではない。量は多いが、足りなくなる。用途は広いが、代替が難しい。国家インフラを左右する。
私はこれを銅の「レアメタル化」と呼びたい。
中国との差はあまりにも大きい
日本の立場は厳しい。銅鉱山生産で中国は年間約200万トン規模を持つ。日本はほぼゼロである。地金生産でも中国は年間1200万トン超。日本は約150万トン規模にとどまる。
この差は単なる生産量の差ではない。国家戦略の差である。
中国は鉱山、製錬、加工、消費産業を一体で押さえに来ている。レアアースで行ったことを、銅でも行う可能性は十分にある。必要な時には安く売る。相手が弱れば価格を握る。
上流を囲い込み、途中工程を支配し、最後に相手をサプライチェーンから外す。これが資源の世界の冷たい現実である。
「中抜き」される日本の恐怖
日本にとって怖いのは価格上昇だけではない。本当に怖いのは「中抜き」である。中国が鉱山権益を押さえる。精鉱を囲い込む。さらにTC、RCを戦略的に安く誘導する。TCとは製錬費、RCとは精製費である。
これを安く抑えられると、体力のない銅製錬会社は採算が悪化する。つまり中国は製錬工程そのものでも振るい落としを仕掛けることができる。原料を握り、工程を握り、価格を握る。そうなれば日本は、どれほど優れた製錬技術を持っていても、原料の入り口で外される。
これが一番怖い。
