<本日の患者>
U.B.さん、77歳、女性、主婦。
「先生、頼んでいた手押し車が届いたんで、今日はそれを使って歩いてみました」
「あ、届いたんですね。使い心地はどうですか」
「手押し車が支えになるので杖が要らないし、何よりそれを押して歩くと脚のしびれが軽くなるんで嬉しいです」
「それはよかった。前屈(かが)みの姿勢が、U.B.さんの腰部脊柱管狭窄症の症状を和らげたんですね。それを『ショッピングカート・サイン』なんて呼ぶんですよ」
U.B.さんは主婦で、認知症があって3年前から近くの介護施設に入っている夫のA.B.さんの所へほぼ毎日通って介護の手伝いをしている。U.B.さんは若い頃から慢性腰痛があったが、5年前にA.B.さんが認知症になって、U.B.さんが自宅でA.B.さんの介護を始めた頃から、腰痛だけでなく脚にしびれや痛みを感じるようになった。
夫の介護で忙しく、自分の健康は後回しにして我慢してきたが、A.B.さんが介護施設での生活にやっと慣れてきたようなので、今年になってようやく自分のための診察を受けてくれた。家庭医診療所での診察と病院の整形外科へ紹介しての検査の結果、腰部脊柱管狭窄症と診断された。
腰部脊柱管狭窄症
2024年12月の『「腰痛は忘れる前にやってくる」意外に多い腰の痛みと長い症状との付き合い、その要因と対処法、頭に入れておきたいリハビリテーションの重要性』で紹介したように、特定の疾患などによって引き起こされる「特異的腰痛」は腰痛の原因全体の10〜20%と少数派である。その中でも脊柱管狭窄症は、椎間板ヘルニアと並んで比較的よく知られた病名ではないだろうか。最近では、健康に関連する一般向け雑誌やテレビ番組でもよく特集されている。
腰部脊柱管狭窄症とはどんな疾患なのかを理解してもらうために、まず、背骨の構造について説明したい。
