背骨(脊柱)は1本の骨ではなくて、腰から首まで順に、尾骨、仙骨の上に5個の腰椎、12個の胸椎、そして7個の頚椎が積み重なってできている。個々の椎骨は、前方(腹側)にある円柱状の椎体とその後方(背中側)で左右に伸びるアーム状の椎弓からなり、左右の椎弓は後部の正中でつながる輪となり、その内側に椎孔というスペースを残す。
上下に連なった全椎骨の椎孔で形成される縦に長いトンネル状の空間を脊柱管と呼ぶ。脊柱管の中には、チューブ状の髄膜と内部を満たす脳脊髄液に保護されて、脳から続く中枢神経である脊髄と、その末端(ちょうど腰椎の位置に相当する)で馬の尻尾のように枝分かれした神経の束である馬尾神経が入っている。
隣接する上下の椎体と椎体の間には、水分を多く含んだ軟骨の一種である椎間板があって体動による衝撃を和らげるクッションの働きをしている。椎弓には各レベルで異なる複雑な形をした突起と上下の椎骨をつなぐ椎間関節がある。
脊柱管の一部が狭くなって、そのために内部にある神経が圧迫されて様々な神経症状が現れる疾患が脊柱管狭窄症である。腰椎の位置で起きるものを腰部脊柱管狭窄症と呼ぶ。
原因は先天的なものから後天的なものまで多岐にわたるが、最もよく遭遇するものは加齢に伴う変化(変性)である。
脊柱管の前方にある椎間板が傷んで後方に突出する椎間板ヘルニア、不安定な椎間板により椎体の軸が前後にずれる脊椎すべり症、上下の椎骨をつなぐ2本の靭帯(前方の後縦靭帯、後方の黄色靭帯)が肥厚したり骨のように硬くなる靭帯骨化症、そして椎骨そのものが変形して棘状の骨棘を形成することなどが脊柱管狭窄の原因となりうる。
腰部脊柱管狭窄症の症状
日本の腰部脊柱管狭窄症の診療のスタンダードを知るには、日本整形外科学会と日本脊椎脊髄学会が監修した『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021改訂第2版』があり、日本医療機能評価機構の『Mindsガイドラインライブラリ』から全文を参照することができる。
これによると、腰部脊柱管狭窄症の診断には、MRI(磁気共鳴画像法)をはじめとした画像診断が適しているが、画像でどの所見を有意な異常とするかについての評価はまだ一定していない。また、各種画像検査で異常があっても必ずしも症状が現れるわけではなく、症状をよく見極めて診断することを優先すべきとされている。
ただ、その症状の見極めが難しい。人によって現れる症状の質が様々であり、同じ人でも、症状の強さとそれが現れる身体の部位が、長い経過とともに微妙に変化する。


