2026年7月1日(水)

エネルギー依存国家・日本

2026年7月1日

 気候変動対策の姿勢を貫いてきた日本だが、世界の「前提」は変わった。エネルギー政策の〝漂流〟から脱し、いかなる国家戦略を描けるか。「Wedge」2026年7月号に掲載されている「エネルギー依存国家・日本 持たざる「弱み」を「力」に変えよ」の記事の内容を一部、限定公開いたします。

 人も組織も生存するために長期目標を立てるが、目の前に大きな問題が発生すればその目標の見直しや代替策を検討することが求められる。

日本は世界の潮流を冷静に俯瞰しつつ、独自の勝ち筋を見出すべきだ(STEVE CHENN/GETTYIMAGES)

 2022年のロシアのウクライナ侵攻を契機としたエネルギー危機は、多くの国で物価上昇を引き起こし、国民生活を疲弊させた。国民の関心は数十年先の「温暖化」よりも目先の「生計費」に移ったのが現実だろう。その結果、多くの国の脱炭素目標は揺らぎ、エネルギー・気候政策の最重要課題は「価格ではないか?」との問いが投げかけられた。

 さらに、今年のイラン戦争は政策の優先順位の1位は気候変動対策ではない、とはっきりと示すことになった。エネルギー輸入国の現在の最優先課題は軒並み「安定供給」である。ガソリンがなければ輸送はできない。ナフサがなければ、塗料もタイヤも作れない。アジアと欧州の多くの国は、環境団体から毛嫌いされる二酸化炭素(CO2)を出す石炭を買って発電するしかない。

 特に、欧州諸国は国民の声を受け、Climate(クライメイト)より生活支援、言い換えれば、Affordability(アフォーダビリティー)だ。「手頃な価格」と訳されるが、「無理なく支払える価格」の意味である。

 事実、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、今年3月のスピーチで「AIとロボット工学が生産性と技術革新の次の波を作る。共に必要とするのは豊富な電力供給と手頃な電力価格だ」と述べた。

 米国でもアフォーダビリティーが今年11月の中間選挙の争点になると報じられている。相互関税とイラン戦争による物価上昇が生活費を引き上げ、国民の不満が高まっているからだ。気候問題に熱心な民主党のキャシー・ホークル・ニューヨーク州知事は、「気候変動対策はエネルギー価格を上昇させる。最優先課題は手頃な価格だ」と述べ、一部の民主党議員からは反発も受けたが、州の脱炭素目標の先送りに着手した。


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