欧州諸国は手頃な価格を達成すると同時に気候問題にも寄与できないかと模索している。
その実現のカギを握るのは原子力発電の再活用だ。1990年までに脱原発を実現したイタリアは、原発の新設検討に入った。85年に原発禁止法を制定した風力発電大国デンマークは、原発の潜在的利用の調査開始を決めた。フォン・デア・ライエン委員長も原発の低減は戦略的誤りだったと認め、増新設を宣言している。欧州が温暖化問題を忘れたわけではない。ただ、国家としての前提が手頃な価格と安定供給に移行したということである。
〝見えない亡霊〟に怯え
〝漂流〟する日本の政策
しかし、4年間で2度のエネルギー危機に遭っても、欧米とは異なり、日本のエネルギー・気候政策が再検討される気配はない。
日本政府は30年度目標に向け順調にCO2を削減できているとするが、その背景には日本の製造業、特にエネルギー多消費型産業の活動の鈍化がある。CO2排出量が多い産業部門の付加価値額は低迷が続いている。その状況下でも、エネルギー危機後の23年に広島で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)で岸田文雄首相(当時)は「現実的な道筋による脱炭素」と首脳声明に書き込み、その後も「多様な道筋」により、50年脱炭素を目指すとの姿勢は不変だった。
そんな中、「手頃な価格」への世界の潮流の変化を、多くの人に気づかせたのは、気候問題に熱心に取り組むマイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツ氏だった。昨年10月に、気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の参加者への長文のメッセージを発表した。その主旨は、「気候変動は重要だが、文明の終わりではない。より重要なのは経済成長と疾病対策」とし、資金の使途の再考を参加者に訴えた。
ゲイツ氏はマラリアの例を挙げた。
※こちらの記事の全文は「Wedge」2026年7月号に掲載されている「エネルギー依存国家・日本 持たざる「弱み」を「力」に変えよ」で見ることができます。
