2026年6月28日(日)

オトナの教養 週末の一冊

2026年6月28日

 定年退職から数週間。待ち望んでいたはずの「自由な時間」が、いつしか重くのしかかる。朝食を終えた後、何をすべきか分からない。スマートフォンに通知は来ない。かつての部下からの連絡も途絶えた…。

 5月の大型連休明けに新入社員を襲う「5月病」になぞらえ、定年退職直後に訪れる心身の不調を「定年後の6月病」と呼ぶ声が広がっている。現役時代には想像もしなかったこの落とし穴に、日本中の男性が静かにはまり込んでいる。

 その処方箋となるのが、『定年を病にしない』(高田明和著、ウェッジ)だ。定年前からの心構えと具体策を専門家の事例とともに紹介する。

(pain au chocolat/gettyimages)

「定年初日の朝食後」に訪れる恐怖

 定年後の問題といえば、長らく「お金」と「健康」が二大テーマとされてきた。だが精神科医で多数の著書を持つ著者は、最も深刻な問題は「居場所」と「孤独」だと断言する。

 実際、内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によれば、男性の就業状況は65~69歳で62.8%となっており、半数以上が就業している。一方で、定年後に仕事や社会的役割を失うことは生活リズムや人間関係の急変につながりやすく、退職後の「居場所」づくりは依然として大きな課題となっている。

 税理士事務所の監査部長だった59歳の楠生さん(仮名)もその一人だ。20年以上スケジュールに従って働いてきた彼は、定年を3カ月後に控えて「定年初日の朝食後、何をしたらいいのか」とパニックに陥った。趣味を見つけようといろいろ試してみたが、かえってストレスになったという。

 この状態こそが、定年後の「6月病」の入り口だ。環境の激変に脳と心が追いつけず、意欲の低下・焦燥感・孤立感が連鎖する。新社会人の5月病と構造は驚くほど似ている。


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