2026年8月6日(木)

台湾「麗しの島」の実像

2026年8月6日

今年5月の習近平氏との首脳会談を終え質問に答えるトランプ氏(ALEX WONG/ GETTYIMAGES)

土方、編集部(以下、──)最近の中国人民解放軍(以下、中国軍)の動きをどう見ているか?

ニューシャム 中国の軍事増強は絶え間なく続いている。軍隊というものは、「特定の時間」「特定の場所」「特定の任務」を遂行できるだけの能力が必要である。もし、中国がそれらを自由に選べるなら、率直に言って、米軍を打ち負かすレベルにまで到達している可能性がある。例えば、中国が中国近海での戦闘を選択した場合、あるいは米軍が中国近海で戦うことを選んだ場合、我々は負けるかもしれないのだ。

グラント F・ニューシャム(Grant F.Newsham)
元海兵隊大佐・日本戦略研究 フォーラム 上席研究員
1956年米バージニア州生まれ。UCLAで法務博士号を取得。米海兵隊のアジア・太平洋地域における情報部長、在日米大使館付海兵隊武官、陸上自衛隊への初代海兵隊顧問などを歴任。著書に『When China Attacks』という中国の脅威を訴えるものがある。(WEDGE)

 まさに、中国こそが世界の脅威である。私はそれを懸念し、声高に訴えてきた。ペンタゴン(米国防総省)の総合評価室(ONA:Office of Net Assessment)の戦略家だったアンドリュー・マーシャルも長年、21世紀の世界の焦点は中国であることを唱えていた。だが、ONA縮小や廃止論を唱えたオバマ政権下のホワイトハウスが象徴していたように、彼の意見に耳を貸さなかった。そして今、本来あるべき状況よりも、我々ははるかに困難な状況に置かれている。

 台湾海峡における近年の中国軍の行動を見れば、陸・海・空、そして宇宙の分野でリソースを適切に配置し、高い精度で運用できることを証明している。例えば、空母。アメリカ人は長年「中国人が空母を運用できるようになるわけがない。何十年もかかる」と見下していた。それは、「アジア人、中国人は我々と対等になれるはずがない」という思い込みがあった。それは大きな間違いだったのだ。彼らは猛烈な勢いで艦船を建造しており、質の高い船も造っている。これこそが、何十年も脅威から目を背けてきた結果である。

──台湾軍の状況は? トランプ大統領の言動には不安がつきまとう。

ニューシャム 台湾軍はここ数年で、着実に能力が向上し、2、3年前よりもはるかに戦える状態になっている。 

 一例だが、米国の軍事顧問の派遣は、今では1000人に上り、防衛体制の再構築の助言・支援を行っている。長年、多くても100人程度だったことを考えれば、大きな変化だ。また、台湾軍は米国内で訓練を受けている。例えば、24年には、約600人の台湾軍がミシガン州に大規模な部隊を派遣し、米陸軍の州兵などと合同軍事演習を行っている。

 バイデン政権下では、ペロシ下院議長も台湾を訪問した。パフォーマンスのような面があったことは否めないが、当時のバイデン大統領が何度も「我々は台湾を防衛する」と発言していたことは記憶に新しい。トランプ政権になってもそのことに変わりはない。第2次トランプ政権が検討している台湾への140億ドルという史上最大規模の武器売却は、5月に行われた米中首脳会談以降、足踏みしているものの、中国の脅威については共通理解がある。トランプ大統領はディールを多用し、言葉遣い、話し方の多くは、不動産業者や交渉人のそれである。しかし、彼の「言葉」だけを聞くのではなく、「何をしているのか」を見ることが重要である。米国は依然として台湾防衛に固くコミットしていると言える。


新着記事

»もっと見る