2026年6月28日(日)

オトナの教養 週末の一冊

2026年6月28日

「一流企業の元部長」という肩書は、定年後には存在しない 

 県内トップの進学校、難関国立大、大手商社の部長という華やかな経歴を誇る守夫さん(62歳)は、定年後も悠々自適なはずだった。ところが今、深刻な孤独を感じている。近所の人には自分からあいさつせず、家族とも距離を置き、気づけば会社員時代の人脈もすべて途絶えていた。「孤高」を目指したつもりが、残ったのは孤立だけだった。

 「一流企業の元部長」という肩書は、定年の瞬間に消える。どれだけ輝かしい過去があっても、大切なのは"いま"どう動くか”だ。

 孤独は単なる寂しさではない。2023年にWHOは孤独・社会的孤立を世界的な健康課題と位置づけ、日本でも同年「孤独・孤立対策推進法」が成立した。高齢期の孤立は、心身の健康や認知機能の低下とも関連する。定年後の生活を充実させるには、お金や健康と同じくらい孤独にならないことが重要だ。

怒りが止まらない、暴言が出る… それは「脳の問題」だ

 大手食品会社の営業部長だった則之さん(55歳・仮名)は、目標未達のストレスから部下に手を上げ、子会社へ左遷。その後も駅員に暴言を吐いて突き倒し、降格処分を受けた。

 消費者庁「令和8年版消費者白書」によれば、全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談では、65歳以上の高齢者からの相談が約3割を占めている。高齢者は消費者トラブルの当事者になりやすい一方で、電話や窓口を通じた相談・苦情の存在感も大きくなっている。また、鉄道係員への暴力行為でもっとも多い年代が60代以上というデータも存在する。

 この背景には「前頭前野の萎縮」という生理的な変化がある。年齢とともに感情制御をつかさどる前頭前野の機能が低下し、「待つ」ことができなくなる。温和だった人が定年後に人が変わったように怒りっぽくなるのはこのためだ。怒りを放置すれば認知症リスクが高まることも分かっており、座禅・瞑想・有酸素運動といった前頭前野を鍛える習慣が有効とされている。

「妻依存夫」の存在が、妻の命を縮めている

 定年後の問題は、本人だけの話ではない。愛媛県で行われた調査(藤本弘一郎院長、2002年)では、「老後に夫と暮らすと妻の死亡リスクが約2倍に高まる」という衝撃的な結果が示された。九州大学の「久山町研究」でも、女性の死亡危険因子として唯一挙がったのが「結婚(=夫の存在)」だった。

 信用金庫の融資部長だった武志さん(60歳・仮名)は、定年後も妻に上から目線で接し続けた。昼食に細かく注文をつけ、日常的なモラハラ発言が続いたことで、妻には「夫源病」と呼ばれる心身症状が現れた。夫が外出している時間だけ、体調が回復したという。


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