サウジアラビアと米国は長年の交渉を経て、原子力協力協定と付随する二国間保障措置協定に7月22日、署名した。米エネルギー省は、両協定が今後数十年にわたる数十億ドル規模の原子力協力の法的基盤となると説明している。
協定の原文は現時点で公開されていないものの、米CNNなどは、米国がサウジ国内でのウラン濃縮を一定の条件下で容認した可能性を報じている。事実であれば、核兵器開発にも転用可能な濃縮能力がサウジ国内に構築されることで、核不拡散上の懸念が高まる。
イランの核開発問題を背景に中東地域情勢が悪化する中、米国・サウジの原子力協力の強化は、中東の新たな混乱要因となりかねない。
原子力技術を求めてきたサウジ
サウジは10年代から原子力技術の獲得を段階的に進めてきた。10年に「アブドゥッラー国王原子力・再生可能エネルギー都市(K.A.CARE)」を設立し、原子力利用に必要な制度や技術基盤の整備に着手。その後、フランス、韓国、中国、ロシアなどと協力協定や覚書を締結し、技術導入を模索してきた。
17年には「サウジ国家原子力エネルギー計画(SNAEP)」を承認し、発電や海水淡水化への原子力利用を本格化させた。22年3月に原子力発電所の開発・運営を担うサウジ原子力エネルギー・ホールディングス(SNEHC)が設立され、同年8月にはその子会社として、原発の所有・運営を担うドゥワイヒーン(Duwaiheen)原子力エネルギー会社(DNEC)が誕生した。
石油・ガス依存の電源構成を多角化するため、DNECはサウジ東部のドゥワイヒーンに原子炉2基(計2.8GW)の建設計画を進めている。中東経済専門誌『MEED』によれば、中国核工業集団公司、フランス電力(EDF)、韓国電力公社(KEPCO)、ロシアのロスアトムの4社が入札プロセスに参加している。
また、サウジは原子炉を導入するだけでなく、国内ウラン資源を活用した核燃料サイクルの構築も目指している。19年、アブドゥルアジーズ・エネルギー相は、ウランの生産・濃縮を含む「フルサイクル」を国内で構築する方針を表明し、25年にはウラン鉱石を精製した中間原料「イエローケーキ」の生産とウラン濃縮・販売の方針を示した。
