2026年8月7日(金)

World Energy Watch

2026年8月7日

 トランプ政権は当初、原子力協力をイスラエルとの関係正常化とは切り離して進めていた。しかし協定署名の翌日、トランプ大統領は、サウジがアブラハム合意に参加し、イスラエルとの関係を正常化することが協定承認の「完全な条件」だと表明した。今後、協定は米議会での審議に加え、サウジ・イスラエル間の正常化交渉の進展にも左右されるため、発効・実施が停滞するリスクが残る。

中東の原発・核関連施設が持つリスク

 中東では過去、核関連施設そのものが攻撃対象となった事例があるため、施設防護は核不拡散と並ぶ重要課題である。たとえば、イスラエルは81年、イラクのオシラク原子炉が将来的に核兵器開発に利用される可能性があると判断し、本格稼働前に空爆した。07年にも秘密原子炉とみなしたシリア東部のキバル原子炉を稼働前に破壊した。そして25~26年には米国とともに、イランのウラン濃縮施設を含む核関連施設を攻撃している。

 加えて、26年5月にはUAEのバラカ原発がイラク領内から飛来したとみられるドローンの攻撃を受け、同原発に電力を供給する発電機で火災が発生した。非常用ディーゼル発電機が稼働したため、放射性物質の放出には至らなかったものの、原子炉本体を直接破壊せずとも、電力供給設備を狙うことで原発の運転に影響を与え得ることが示された。

 また、格納容器外にある使用済み燃料プールは、攻撃によって冷却機能を失ったり水が失われたりした場合、燃料が発火し、大量の放射性物質が大気中に拡散する恐れがある。

 サウジでも、UAEのバラカ原発と同様の事態が生じる可能性は排除できない。イラン戦争下、イランが湾岸諸国に多数のミサイルや無人機を発射し、サウジも直接の攻撃対象となった。

 7月20日にはイエメン拠点のフーシ派がサウジ関連船舶を攻撃対象とすると表明し、サウジ紅海沿岸のジーザーン製油所を攻撃した。さらに7月27~28日には、イラクの親イラン民兵がサウジ東部・中部に対し、約30回の無人機攻撃を実施した。

 今後、サウジが原発や核関連施設を建設する場合、イラン、イエメン、イラクの複数方向からミサイルや無人機による攻撃を受けるシナリオを想定し、原子炉本体だけでなく、外部電源、冷却設備、使用済み燃料施設などを含めた包括的な防護体制を構築する必要がある。

 そして、米国企業がサウジ国内の原発や核関連施設の建設・運営に深く関与するとなれば、これらの施設が米国の戦略的権益とみなされ、イランや親イラン勢力による攻撃対象としての重要性が高まる。その場合、米国は施設防護やミサイル防衛を含めた、サウジとの安全保障体制を一段と強化する可能性がある。

 その結果、米国とイラン・親イラン勢力との対立が中東地域の緊張をさらに高めるリスクがある。

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