2026年8月24日(月)

Wedge REPORT

2026年8月24日

 事業性融資の新たなスキーム「企業価値担保権」が注目されている。今年5月に施行された「事業性融資推進法」で導入され、将来のキャッシュフローから算出した企業価値を担保に資金を融資する。不動産担保や経営者保証に依存した融資から脱皮を目指すものだ。特に、中小企業等や小規模事業者、スタートアップといった不動産などの有形資産が乏しい事案での活用が期待される。

 ただ、金融機関には支援体制の充実に加え、引き当てや回収など融資実務上の問題や企業の事業承継における対応などの課題も指摘される。金融機関と事業会社との密接なコミュニケーションと信頼関係が前提となるとして、「中長期的な視点で制度の定着を期待している」(金融庁)という。

(oxygen/gettyimages)

不動産担保融資からの脱却へ

 金融機関による事業性融資はこれまで、不動産担保や経営者保証に依存してきた。その結果、不動産価格の下落による不良債権化、事業承継時の経営者保証の問題など様々な課題が表面化。「企業価値担保権」制度は以前から検討されてきた。2002年の「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」、05年の「地域密着型金融の機能強化に関するアクションプログラム」では事業からのキャッシュフローを重視し、「不動産担保・保証に過度に依存しない融資を促す」ことが明記された。

 08年のリーマン・ショックの経済危機などを経て、14年の「モニタリング基本方針」、15年、16年の行政方針では「共通価値の創造」を目指した金融機関のビジネスモデルの転換の中でも指摘。18年6月には検査マニュアルの廃止を見据え、融資に関する検査や監督を見直すために「融資に関する検査や監督実務についての研究会」が設置され、具体的な議論を経て含め法制化に着手。

 22年の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では、「金融機関には不動産担保等によらず、事業価値やその将来性といった事業そのものを評価し、融資することが求められる」と指摘。とくに、中小企業や小規模事業者、スタートアップ等が事業全体を担保に金融機関から資金調達できる制度創設が実現した。

支援機関など新たな制度を導入

「企業価値担保権」は、当該企業のすべての資産を担保とする。金融機関等は、企業の成長力など将来性を見極める審査能力の向上とともに、経営者の将来ビジョンを共有・評価する「目利き力」がカギとなる。また、融資実行後は経済環境の変化に対応し事業の継続性をしっかり把握できる「モニタリング力」「予兆管理」も問われる。

 今回のスキーム特徴のひとつが、新たに導入された「認定事業性融資推進支援機関」だ。「企業価値担保権」の活用を支援するために、事業者や金融機関に対して助言や指導を行う。事業性融資に関して高度な専門的な知見を有している機関で金融庁が認定する。具体的には、企業の経営資源や財務内容野などを分析し、経営実態の把握や事業計画の策定などのほか、定期的なフォローアップや事業計画の変更等の助言も行う。

 さらに担保権の設定者が、「企業価値担保権信託会社」に限定されている点。具体的には、金融機関など貸付人は直接、企業価値担保権を設定できず、事業会社は信託会社と「信託契約」を結ぶ必要がある。信託会社は免許制で「企業価値担保権信託業務」を行う場合、「みなし免許」が必要となる。「企業価値担保権信託会社免許」を持つ金融機関等は、メガバンクや地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合など188機関(2026年7月2日現在)。こうしたスキームを採用した背景には、不正を防ぐ狙いがある。企業価値担保権はその事業会社の総財産が対象。悪用されると当該企業の総財産が奪われる可能性があるためだ。


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