よく聞く「インフルエンザ」は「季節性インフルエンザ」を意味する。日本では年に1度、冬に流行するのが通例である。ところが2026年には8月からインフルエンザ流行が始まった。
全国の定点あたり報告数は平年の約3倍に達し、「真夏にもかかわらず」という枕詞つきで各地のニュースが報じる異例の事態となっている。例年であれば流行入りは10月から12月頃で、暑さの盛りに警報レベルの流行が起きること自体が珍しい。
さらに目を引くのが、流行の立ち上がり方である。全国的に一様に増えたのではなく、亜熱帯の沖縄と真夏でも冷涼な東北地方という、気候も距離も大きく異なる2つの地域で先に立ち上がったのだ。だから季節外れの流行は、単純な「暑さ」や「湿度」では説明がつきにくい。
これに対し、報道や医療機関のブログでは「エアコンによる締め切った室内」や「夏休みの人の移動」といった判で押したように同じ説明が繰り返される。これでは「夏の流行」という事象を説明しきれない。検証してみた。
実は「初めて」ではない
夏にインフルエンザが流行すること自体は、まったくの新現象ではない。沖縄では冬の流行とは別に夏にも患者数が増える「二峰性」の流行パターンが以前から知られており、地元紙や医学誌でもたびたび取り上げられてきた地域固有の現象である。
しかもこれは最近始まったことではなく、最初に記録があるのは05年で、その後、05〜09年は毎年観察されていた。10年の夏だけ「なぜか一旦消失」し、11年に再び現れ、12年には前年より規模が拡大して定点あたり218.3人に達した。これは同じ年の冬の流行(288人)に迫る規模だった。つまり沖縄の夏季流行は、少なくとも20年以上前から続く、長期的な現象である。
全国規模で見ても、夏の大流行は今回が初めてではない。09年5月には新型インフルエンザが発生し、そのまま夏を通じて感染が拡大した。6月には強制入院などの措置は取りやめて、季節性インフルエンザと同等の扱いに切り替わった。
