米国のイラン攻撃に端を発するホルムズ海峡の封鎖は特にアジア各国を震撼させた。我が国や韓国、そして中国は原油の戦略備蓄制度があるが、他のアジア諸国はほぼ備えがなく、供給確保に右往左往した。
封鎖からしばらくの間、「化石燃料依存に終止符を打って、電気自動車、あるいは再エネを主とするクリーンエネルギーへの転換を加速するべき」というような論説も散見された。しかし我が国でもナフサ危機で大騒ぎになったように、電力しか供給できない再エネでは(そもそも再エネだけでは電力の安定供給もままならないのだが)、産業活動を支えることはできないことが可視化され、現段階の化石燃料フェーズアウトは実現不可能であるとの認識に説得力を持たせることとなった。
ホルムズ危機で露呈した日本のナフサ脆弱性
一応、簡潔に石油や天然ガスが動力や熱源以外で我々の生活を支えている状況を説明しておこう。我が国の2023年のエネルギーバランス表から概算すると、まず石油は62%が運輸部門における動力供給のために消費され、産業用には27%、そして主に暖房や空調、そして給湯のために家庭で6%、業務用に5%が消費されている。産業用には原料のみならずボイラーや自家発電といった熱源としての用途も含まれており、ナフサとして加工され、化学用原料となるのは12~15%と推定される。
他方、天然ガスは57%が発電用燃料として用いられ、都市ガスなど熱源として25~30%が消費されていると考えられる。原料用途としてアンモニアや水素、あるいはメタノール製造のために10~15%が消費されている。
石油やガスが化学用原料として用いられる比率は消費量の15%程度とそれほど大きくはないが、現代の社会生活を支える欠くべからざるものである。ナフサを経てプラスチック、合成繊維、合成ゴム、塗料溶剤、洗剤など様々な化学製品に加工される。
ホルムズ海峡の封鎖以降、我が国でも住宅メーカーがプラスチック製品の供給不足から新規受注を停止したり、カルビーがパッケージの印刷塗料節約のために白黒パッケージを発売したりといったニュースが報道され、短期的にも思いのほか、影響が及ぶことがひしひしと感じられたものである。
実際、データが入手できる我が国の今年1月から5月のナフサ販売量は前年同期比で16.1%減少し(経済産業省「石油統計」)、汎用プラスチックの原料であるポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)の生産量はそれぞれ25.1%、15.9%と大幅に減少した(石油化学工業協会「4樹脂生産・出荷・在庫実績推移」)。PEとPPの生産激減には需要低迷といった要因もあるが、ナフサの供給不足に端を発するナフサ価格上昇の影響が大きい。
