開封するだけ、お湯を注ぐだけで食べることができる「超加工食品」。便利な食材として利用することも多いだろうが、これが今、「健康を害する」ものとして、規制への動きが広がっている。
トランプ政権下で保健福祉長官に就任したケネディJr.氏は、超加工食品を生活習慣病の元凶である「毒」と断じ、厳しい規制を導入する姿勢を鮮明にした。世界保健機関(WHO)は超加工食品が年間800万人の死亡に関連するとして、消費に関するガイドライン策定に着手している。コロンビアは最近、超加工食品を対象とした税を導入した。
日本でも、超加工食品を懸念する声も聞こえているが、実際に何が問題なのだろうか。実態の解明と対応策を検証してみたい。
現代の病の原因「生活習慣病」
戦前の日本人が苦しんだのは結核、脚気、赤痢、コレラといった感染症や栄養不足による病気だった。それが様変わりして、現在は糖尿病、高血圧、脂質異常症、がん、心・脳血管疾患などの生活習慣病が大きな問題になっている。
誰もが思いつくその原因は、かつての炭水化物中心の質素な食事から、タンパク質と脂肪、塩分と糖分が豊富な高カロリーの食事に変わったことだ。しかし、ここ数十年で家庭における砂糖や食用油といった肥満誘発性の原材料の購入は減少傾向にあるにもかかわらず、肥満や生活習慣病は増加し続けている。他方、砂糖と食用油の国内総消費量は減っていない。
これらの事実から、人々は家庭で料理に使う「見える砂糖」の量を減らす一方で、清涼飲料水、菓子、惣菜といった加工食品に含まれる「見えない砂糖」や異性化糖を無意識のうちに大量に摂取していることが分かる。食用油の消費に関しても、砂糖とよく似た構造が見られる。この変化が生活習慣病の増加をもたらしていると考えられた。
ところが、この説にも大きな欠陥があった。それは、家庭で調理した食品も加工食品も、たんぱく質、脂肪、炭水化物といった栄養素の量はほとんど変わらないことだ。家庭調理から加工食品に変えても、カロリー摂取量は変わらないはずである。栄養素以外に生活習慣病を引き起こす要因があることになる。
ブラジル・サンパウロ大学のモンテイロ教授は、家庭での食品の加工(料理)を、工業的な食品加工(超加工)に変更したことが原因だという、一見、奇想天外な仮説を思いついた。そして、この仮説を検証するために、食品をその加工度で分類する「NOVA分類」を提唱した。NOVAはポルトガル語で「新しい」という意味である。
