次は「おいしさ」である。製造業者は、脂肪、糖分、塩分、そして香料を特定の比率で組み合わせることで、味覚に最大の快感を与える、おいしい製品を開発する。強烈な味覚、特に強い甘みは、脳内の報酬経路を活性化させて、渇望、食べる量のコントロール喪失、強迫的な摂食行動といった「嗜癖様」の食行動を促進することで、超加工食品の摂取を抑えることが困難になる可能性である。
最後に、超加工食品が添加物を含んでいることが問題視されている。日常的に多種類の添加物を組み合わせて長期間摂取した場合の「カクテル効果」や、いくつかの添加物が、腸内細菌叢のバランスと多様性を乱すことで、腸のバリア機能を弱める可能性についての懸念である。腸のバリア機能が損なわれると、腸内の有害成分が血流に侵入する「リーキーガット症候群」が起こり、これが心血管疾患、2型糖尿病、さらにはうつ病や不安障害といった疾患を引き起こすという説だ。
疑問と批判
超加工食品に対する多くの批判の一つが、NOVA分類の定義が「高い収益性」「極めて嗜好性が高い」などの測定不可能な主観的用語に依存しているため、分類にばらつきが生じることだ。また超加工食品の「目的」に「利益のため」という項目があるが、これはイデオロギー的な偏見に根ざしたものであり、非科学的な価値判断を持ち込むものと批判されている。
大きな問題は、超加工食品という概念には、「人工的」で「不自然」な食品への反対運動と結びつきやすいという側面があることだ。オーガニック食品の推奨、農薬や添加物への批判といった特定の価値観を持つグループにとって、超加工食品は自身の主張を補強し、広めるための強力な手段となっている。
その結果、本来であれば加工の度合いや健康への影響といった科学的根拠に基づくべき議論が、自然か不自然か、伝統的か工業的か、添加物を使っているかといった、よりイデオロギー的で二元論的な対立に陥る。このような主義主張の混在が、消費者や政策立案者の間で混乱を招いている。
最も大きな問題は、添加物による腸内細菌叢の変化と「リーキーガット症候群」という仮説である。食品中に含まれる化学物質の中で、添加物は最も多くの研究が行われ、「一生の間毎日摂取しても影響がない量」である一日摂取許容量(ADI)以下の量しか使用できない。そのような微量を人が摂取した時に、腸内細菌叢に変化が起こり、腸管バリア機能に障害を与え、各種の疾患起こるという仮説の科学的な証明はない。
化学物質のカクテル効果という説もまた証明がない。野菜や果物などの生鮮食品は多数の天然化学物質を含むので、人間は毎日これらを摂取している。その中には発がん性物質もある。そして添加物や残留農薬の摂取量は、天然化学物質の摂取量の1万分の1に過ぎないという調査結果もある。
