2026年2月26日(木)

深層報告 熊谷徹が読み解くヨーロッパ

2026年2月26日

 グリーンランド領有をめぐる議論の中で、米国のトランプ大統領が一時軍事力行使の可能性を示唆したことで、欧州諸国の不信感は一段と強まった。このため独仏英は、欧州独自の核抑止力についての議論を始めた。

ミュンヘン安全保障会議で会談したフランスのマクロン大統領(左)とドイツのメルツ首相(中央)、英国のスターマー首相(代表撮影/ロイター/アフロ)

 今年2月13日から3日間にわたり、ミュンヘン安全保障会議(MSC)がホテル・バイリッシャーホーフで開催された。1963年以来、毎年開かれている。

ミュンヘン安全保障会議が開催されたホテル・バイリッシャーホーフ(筆者撮影)

 115カ国から約60人の首脳、国防大臣、外務大臣、軍関係者を含む1000人が参加した。民間団体が主催する安全保障会議としては、世界で最も注目される会合だ。日本からは小泉進次郎防衛大臣と茂木敏充外務大臣が出席した。

独仏が核抑止力について協議開始

 ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は初日に基調講演を行った。メルツ氏は「地政学的リスクと緊張が高まり、大国がパワーポリティクス(覇権主義的な外交政策)を堂々と実行するようになった今日、欧州は眠りから覚めた。今日の世界では、自由は当たり前のものではない。自由を守るには、強固な意志の力が必要だ。我々はそのための努力を今始めなくてはならない」と述べた。

 MSCには米国のルビオ国務長官、北大西洋条約機構(NATO)のアレクサス・G・グリンケウィッチ最高司令官(米国空軍大将)、約50人の米国上院・下院議員も参加していた。メルツ氏は米国に対する直接的な批判を避けながらも、「我々は他国への依存を減らし、欧州の主権性を強める。ドイツはNATOに代わる組織を作る気はないが、NATO内で欧州の柱を強化する」と述べた。

 この演説の中で、MSC参加者たちが最も注目した発言は、メルツ氏が欧州独自の核抑止力について述べた部分である。彼は「私は、フランスのマクロン大統領と、欧州の核抑止力についての協議を始めた」と述べ、独仏間で欧州諸国が独自に決定権を持つ核抑止力の枠組みについて、話し合いが始まっていることを明らかにした。メルツ首相が公式の席で、核抑止力に関する独仏協議を明かしたのは初めてである。

 ただしメルツ氏はこの演説の中で「もちろん、ドイツは核抑止力に関する法的な義務を守る。我々は欧州の核抑止力を、NATOの核シェアリングの枠組みの中で強化するつもりだ。欧州の中に(核の傘によって)守られる地域と守られない地域が生じるような事態は避ける」と注釈を加えた。


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