2026年5月8日(金)

プーチンのロシア

2026年5月8日

 米国、イスラエルによるイラン攻撃に端を発した中東情勢の混乱が依然として続く中、ロシアが「食料安全保障」の確保を名目に、旧ソ連や中国、ブラジルなどで構成するBRICS参加国との間で新たな共同食料備蓄の仕組みを創設する考えを打ち出している。ホルムズ海峡の封鎖が続けば農産物の育成に必要な肥料の入手が困難になり、世界的な食料品価格の高騰や、飢餓人口の増大を招きかねないと主張している。

(Aleksandr Rybalko/gettyimages・ロイター/アフロ)

 世界最大の小麦輸出国であるロシアの主張は一見、道理に沿ったものにも見えるが、ロシアは穀物生産大国のウクライナに侵攻して輸出網をふさぎ、世界の食料安全保障を脅かすなど信頼に著しく欠けるのが実態だ。ロシアはこれまでも、BRICSにおける穀物取引所の創設などを訴えてきたが、実現していない。各国の警戒が背景にあるとみられる。

 共同備蓄の構想も、ロシアが穀物市場に対する影響力を強め、発言力を高める思惑が透けて見える。ただ穀物やエネルギー輸入で対ロ依存が深まる国々では、ロシアの提案になびく声が出ている実態もある。中東情勢を奇貨として自国の影響力を高めるロシアの姿が浮かび上がる。

収穫量は〝半減〟危機と強調

 「世界の食料安全保障に対するさらなるネガティブな要素が鮮明になっている。運輸価格の高騰は、農業ビジネスに対する多大な影響を与えている」

 「ロシアはさらなる農産物の輸出を拡大することができる。アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどもその対象だ。食料安全保障の確保に向けてユーラシア経済連合、そしてBRICSの国々との連携を強めるべきだ。それは、彼らと共同の食料備蓄を開始するという案も含まれるだろう」

 ロシア国家安全保障会議のアレクサンドル・マスレニンコフ副書記は4月13日、中東での紛争を念頭にそう発言して注目を集めた。ユーラシア経済連合は主に旧ソ連の国々が加盟し、BRICSはロシアのほか中国、ブラジル、インド、南アフリカなど新興10カ国が加盟する。加盟国の多くは人口規模が大きく、経済的には脆弱であるなど、今回の中東情勢が食料問題を引き起こした際に影響を強く受けるであろう国々が多い。

 マスレニンコフ副書記は、中東情勢の悪化が世界の食料安全保障に甚大なリスクをもたらしていると指摘し、肥料取引の要衝であるホルムズ海峡の封鎖が続けば主要作物の収穫量が半減する危険があると述べた。


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