食料版OPEC
ロシアはこれまでもBRICSにおいて、食料版OPECとも呼ばれる加盟国間の穀物取引所の創設を唱えたことがある。ウクライナ侵攻開始から約2年半が経過した24年10月に、ロシア中部カザンで開催されたBRICS首脳会議でのことだ。
BRICSには小麦輸出量で世界最大のロシアに加え、大豆、トウモロコシの輸出量で世界最大規模のブラジルが入る。ロシアが取引所構想を訴えた背景には、米国の商品取引所で自国産穀物が安価に取引される現状への不満と、自国主導で価格を形成したい思惑があったとされる。
ただ、この構想も現時点では実現してはいない。原油と異なり生産量が天候に左右され、さらに輸出国が多様な穀物では、OPECのようなカルテルを作りにくい側面がある。加えて、当時はロシアによるウクライナ侵攻の長期化が鮮明になり、黒海経由のウクライナ産穀物の輸出が今後も脅かされ続けるという実情が鮮明になっていた時期だった。
ロシアと関係が深いBRICS首脳会議という場を使って食料輸出国としての地位を誇示するロシアの狙いはあからさまで、そのような食料の政治利用に同調することは、BRICS諸国にとってもリスクが伴うものだった。
懸念と賛同
今回ロシアが提唱した共同食料備蓄構想に対しては、世界最大の小麦輸入国で、ロシアへの依存度が高いエジプトにおいても「単一のサプライヤーに頼ることへのリスク」を指摘する声が上がっているという。ロシアはまた、エジプトを北アフリカにおける穀物輸出のハブにする提案を行っているというが、この提案をめぐっても、輸出インフラがいずれ軍事利用される懸念が指摘されている。
ただ、エネルギー分野でもロシアに依存し、投資を多く受けるエジプトでは、リスクを勘案しても一連の提案を経済的なチャンスととらえる声もあるのが実態だ。中東危機が続く限り、ロシアの提案に賛同する動きが広がる可能性もある。
