米国最高裁判所において2026年4月27日、除草剤「ラウンドアップ」の主成分であるグリホサートを巡る口頭弁論が行われた。バイエルがモンサントを買収して以来直面し続けてきた、天文学的な賠償リスクをはらむ一連の「ラウンドアップ訴訟」は、この司法判断によって最終的な決着、あるいはさらなる混沌へと向かう分岐点に立たされている。
ラウンドアップ訴訟の現状
バイエルが18年にモンサントを630億ドルで買収して以来、同社はグリホサートが非ホジキンリンパ腫の原因であると主張する数万件の訴訟に翻弄されてきた。訴訟の原点は、15年に国際がん研究機関(IARC)がグリホサートを「ヒトに対しておそらく発がん性がある(グループ2A)」と分類したことに遡る。この分類を根拠に、数万人規模の原告が、「リスクを認識しながら適切な警告を怠った」として、モンサントを提訴したのである。
IARCの分類は世界の食品安全機関から厳しく批判されたのだが、その裏側には米国法律事務所の暗躍があったことはすでに紹介した。(科学と法律事務所の仁義なき戦い!除草剤「ラウンドアップ」訴訟の行方、2026年の米国で下される最後の審判 Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン))
バイエルはこれまでに解決した約10万件の訴訟に対し、約110億ドルの和解金などを支払ってきたが、依然として約6万件以上の訴訟が係属中である。26年初頭、同社はこの局面を打開すべく、現在および将来の請求を解決するための72億5000万ドルの集団和解案を提示している。
バイエルの財務状況は、度重なる巨額の賠償支払いと将来的な不確実性により、深刻な状況にある。25年末時点での同社の訴訟関連引当金は112億5000万ユーロ(1800億円)に達し、その大部分がグリホサート関連である。
最高裁判所における争点
26年4月27日に行われた口頭弁論は、ミズーリ州のジョン・ダーネル氏がラウンドアップにより非ホジキンリンパ腫を発症したとして125万ドルの損害賠償を勝ち取った判決の是非を問うものである。この事案の核心は、州法に基づく「警告不備」の請求を、連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)が排除できるのかという点にある。
FIFRAは、国が示す表示要件と異なる要件を、州が独自に課すことを禁じている。国の機関である環境保護庁(EPA)は、「グリホサートに発がん性がある可能性は低い」として、警告ラベルの表示を義務付けていないばかりか、そのような警告を「誤認」に当たるとしている。従って、州の裁判所や陪審員が「警告を表示しなかったことは不当」と判断することは、国が定めた「表示の均一性」という原則に反するというのが、バイエルの主張である。
一方で、原告側は、IARCがグリホサートにリスクがあると判断している以上、その警告を表示しないという国の措置は不当であり、州法による救済が必要と主張している。
