2026年5月6日(水)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2026年5月6日

 最高裁がこの事案を受理した理由の一つは、いくつかの連邦控訴裁判所で、異なる判断が行われていることであり、そのような法解釈の不一致の解消が求められていることだ。

トランプ政権の対応

 第2次トランプ政権は、前バイデン政権の立場を全面的に覆し、バイエルを支援する姿勢を鮮明にしている。この方針転換は、農業生産力を国家の安全保障の根幹と位置づけるトランプ流のナショナリズムに基づいている。

 トランプ政権のサウアー訟務長官は、バイエル側を全面的に支持する意見書を提出し、口頭弁論への参加も認められた。そして、EPAの科学的判断が全米で尊重されるべきであり、50の州が個別に異なるラベル表示を要求することは「規制のパッチワーク」を招き、米国の農業競争力を削ぐと述べている。

 トランプ大統領が26年2月18日に大統領令「リンおよびグリホサート除草剤の適切な供給を確保することによる国家防衛の促進」に署名した。グリホサートを国防および食料供給網に不可欠な「重要物資」と認定し、その供給中断は国家を脆弱にすると宣言したのだ。

 そして国防生産法に基づき、農務長官に対し、グリホサートの生産を優先させ、必要に応じて資源を配分する広範な権限を与えた。この大統領令が大きな議論を呼んでいる点は、国防生産法が、政府の命令に従って行動した者に対し、その行為から生じる損害賠償責任を免除することを定めている点である。この大統領令は最高裁に対して、「グリホサートは国の最重要物質である」という極めて強い圧力をかける政治的効果を持つと言われる。

 トランプ政権のこうした動きは、政権を支えるMAHA運動(Make America Healthy Again:アメリカを再び健康にする)との間に深刻な対立を生み出している。グリホサートの危険性を長年主張してきたロバート・F・ケネディ・ジュニア氏を保健福祉省(HHS)長官に任命しながら、一方でグリホサートを保護するという矛盾した政策は、支持層の一部から「裏切り」と見なされているのだ。

 ケネディ・ジュニア氏自身は、最終的に「敵対国への供給依存を減らすため」という論理で大統領令を支持したが、支持基盤である健康意識の高い有権者層からは厳しい批判にさらされている。


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