語り手:寺内 康介(弁護士)
聞き手:KAI-YOU(ポップカルチャーメディア)
構成・執筆:長谷川賢人
*本記事は、『ポップカルチャーを愛し続けるための法律入門 どこから盗作? どこから中傷?』(ウェッジ)から一部抜粋、編集の上掲載しています。
――テレビ朝日系列のテレビ番組『永野&くるま クレバーなクレーマー*1』(2024年7月15日放送回)で、お笑い芸人の永野氏と髙比良くるま氏が、「SNSでテレビ番組のキャプチャがバズること」について意見を述べたシーンが話題になりました。放送内で、テレビ朝日が違法動画や画像の削除作業を行っていること、動画配信サービス「TVer*2」へのURLリンクを貼ればOKではないことなどが強調されていた点も印象に残っています。そもそも、テレビ番組の画面キャプチャ*3や切り抜き動画*4を、SNSをはじめとするインターネット上にアップロードすることの法的問題点について、どのように考えるべきなのでしょうか?
テレビ番組を素材としてアップロードする行為は、著作権法上、大きく2つの権利侵害に該当する可能性があります。
まずは複製権侵害です。テレビ番組の画像や動画をキャプチャする時点で、著作物の「複製」に当たります。それを行う複製権、つまり「著作物をコピーする権利」は、著作権者が持つ権利の一つです。
個人的に楽しむ目的で行う「私的複製」であれば法的に許容されますが、SNSにアップロードする目的でキャプチャする場合は、私的複製の範囲を超えてしまいます。
――仕事で使う場合はどうでしょうか? 社内資料に使うため、他の著作物をコピーしている会社も多そうですが。
業務上の利用は「私的」に含まれません。例えば、業務目的でテレビ番組の画面キャプチャを共有したり、書籍をコピーしたり、「商用利用可能」とされていない画像をダウンロードしたりすることは、理論的には著作権侵害の可能性があるのです。
――えっ⁉
驚きですよね。しかし、そもそも権利者側が問題行為を把握できないことも多いでしょうし、ごく常識的な範囲内であれば黙認するケースもあるといったことから、実際に問題となることはそれほど多くありません。
もっとも、新聞社に無断で新聞記事を社内のイントラネット(社内向けの電子掲示板やネットワーク)で共有した行為が著作権侵害とされた裁判例*5もあります。
新聞社は、一定の利用料を支払えば社内で新聞記事を共有できるというクリッピング・サービスを展開していますし、会社が購入した新聞を社内ネットワークで見られてしまっては売上減にもつながるため、黙認はできないでしょう。
*1 『永野&くるま クレバーなクレーマー』 テレビ朝日系列で2024年7月に放送された深夜バラエティ番組。当初は、視聴者や業界関係者から寄せられた「クレーム」を題材に、「世の中をちょっと良くするクレバーなクレーム」を見つけていくというコンセプトだった。番組の反響を受けて、後にタイトルとコンセプトを変更し、『永野&くるまのひっかかりニーチェ』としてレギュラー化。
*2 TVer 日本の民放テレビ局が共同で運営する公式無料配信サービス。放送後の番組を一定期間視聴できる。
*3 画面キャプチャ テレビやパソコンなどの画面を「画像・動画」として保存する行為。スクリーンショットとも呼ばれる。
*4 切り抜き動画 長尺の動画・配信から特定の場面を短く編集した動画。YouTubeやTikTokなどの動画配信プラットフォームでも人気のコンテンツ形式。
*5 鉄道会社が東京新聞や日本経済新聞の記事を10年以上にわたり社内イントラネットに掲載していた行為について、東京地裁は複製権および公衆送信権の侵害を認め、それぞれ約200万円、約460万円の損害賠償を命じた(東京地裁2022年11月30日判決)。
