2026年4月7日(火)

Wedge REPORT

2026年4月7日

 他人のコンテンツをただ紹介する切り抜き動画であれば、先ほど述べたうち、主従関係、引用目的の正当性(引用の必要性)を満たすとは言えず、引用の適用は難しいでしょう。

――「引用」って気軽に出てくる言葉ですけど、かなり難しいものなんですね。

 そうなんです。結構誤解があるところで、「引用なのでいいですよね?」と聞かれることもあるのですが、意外と要件を満たすのは大変です。日常的な用語とこんがらがるので、「引用」と「適法な引用」を分けて説明することもあります。

 そもそも「適法な引用」が成立するのは、何かしら自らの考えを世の中へ伝えたいとか、表現したいことがまずあり、それがメインになることが前提です。そして、そのメイン部分を成立させるために他人の著作物を利用する必要があるかといったことが問われます。

 そのため、ただ面白いシーンを紹介するだけでは「適法な引用」にはなりませんし、分析や批評と称しているだけで実際はただの紹介であれば、それも「適法な引用」とは認められません。

「適切な引用」と認められるためには?

――「面白いから」というだけでは引用の正当な理由になり得ないと……。

 ここで言う、著作物を利用する必要があるか(引用目的の正当性・必要性)の判断は難しいです。例えば、あるテレビ番組内のコメンテーターによる問題発言を引用して社会問題を「批評」する場合、実際の映像まで必要なのか、映像は使わずその発言の概要を紹介すれば足りるのではないか、 という点は問われるでしょう。

 他方、例えばダンスの振り付けとキャラクターの動きが似ていることで炎上した事例に関して法的検討をするコラムを書こうと思ったときに、実際のダンスの動きとキャラクターの動きがわかる映像の比較は必要でしょう。言葉の説明では伝わりにくいですからね。もしこれを書籍化するのであれば、キャプチャを載せることも正当化されやすいでしょう。

 このように、対象を自身の言葉だけでは十分に説明できない要素があるような場合、元作品そのものを引用する必要性は高まってくると言えます。

 引用する側は「その素材をそのまま使用する必要性」を明確に説明する必要がありますし、使う映像の長さや画像の多さなど、使用する範囲が不必要に多くならないよう注意しなくてはなりません。なお、ウェブ記事などで映像を引用したい場合は、公式YouTubeの埋め込みで対応するのが安全です。リンクを埋め込む行為は著作物の利用には当たらないので、著作権侵害とならないからです。

――引用にも説明責任が伴う、ということですね。意外と「適法な引用」とは認められにくそうだと思いました。

 はい。引用が認められるには様々な注意点があり、ハードルがあるのは事実です。ただし、著作権法の目的から照らせば、他人の作品を「利用してはいけない」と硬直的になりすぎることがよいとも思えません。引用が認められる範囲を厳しく制限しすぎれば、新たに生まれる表現が狭められてしまうでしょう。ここでも保護と利用のバランスが求められています。

 興味深いのは、先ほど見た引用を認める著作権法の条文には「公正な慣行に合致」という文言があることです。「公正な慣行」は社会がつくっていくものとも言えます。

 現代は動画や画像で物事を伝えることが一般的になりつつあります。単純な「切り抜き動画」は別として、自らの考えや表現を世の中に伝えるに当たって、他人の動画や写真をどこまで利用することが「公正」なのかは、もしかすると時代とともに変わっていくかもしれません。

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