――「社内のクローズドな範囲だから問題ない」という認識は誤りであると。そうすると、社内の誰もが読めるように新聞を置いておくことや、お店に雑誌や漫画を置くことはどうなんでしょう? ラーメン屋に置いてありがちな『週刊少年ジャンプ』とか……。
その場合は、著作物のコピーを取っているわけでないので「複製権」の侵害にはなりません。なお、著作権には「貸与権」というものもあり、著作物を無断で公衆に貸し出しできないのですが、あくまで店の中で読めるものであれば「貸与」にはならないと考えられており、貸与権との関係もクリアできます。
――あくまで複製しているかがポイントなのですね。複製権のほか、「切り抜き」のアップロードはどのような権利侵害に該当するのですか?
公衆送信権*6の侵害です。キャプチャした画像や動画をSNSにアップロードする行為は、インターネットなどを通じて著作物を公衆向けに「送信」する権利、いわゆる「公衆送信権」の侵害に該当します。
「公衆」とは、不特定「または」多数を言います。「または」なので少数であっても不特定である場合や、特定でも多数の人々は「公衆」に当たります。
――では、誰もが見られるわけでない「メンバー型のSNS」だとセーフなのでしょうか?
ケース・バイ・ケースでしょう。例えば、承認したメンバーしか見られない、いわゆる「鍵付き」のSNSアカウントであっても、それを見られる人が多数いる場合は「公衆」に該当します。100名もいれば多数になるでしょうが、具体的な人数の基準はありません。
逆に、限定的な、少人数かつクローズドなグループ内での共有であれば「公衆」送信に当たらない可能性はあります。ただし、鍵付きでもメンバー承認のリクエストを緩く認めているならば「不特定」への公開とされる可能性があるでしょう。
このように、少人数のクローズドなグループ内での共有を除き、テレビ番組のキャプチャや切り抜き動画をSNSにアップロードする行為は、著作権法違反のリスクが高いと言えます。
「引用」が成立するための条件
――テレビ番組のキャプチャや切り抜き動画をアップロードする人の中には「引用」であることを主張するケースも見受けられます。一方で、テレビ局や番組制作サイドからは「出典明記やTVerへのURLリンクを貼れば構わないという話ではない」と注意喚起する言葉も。「引用」が適用される場合の要件について、どのように考えるべきでしょうか?
引用とは、自分の作品などに他人の著作物を登場させることですが、著作権法上適法な引用と認められるには、きちんと著作権法上の要件を満たす必要があります。その成立要件は、著作権法第32条第1項に記載されていますが、読んでみると、かなり「ざっくり」した内容だと感じるはずです。
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
このように「公正な慣行に合致」することと、「目的上正当な範囲内」であることが要求されていますが、「具体的にどのような態様であれば該当するのか」は条文からはハッキリしません。もっとも、これまでの裁判例や学説などから、適法な引用と認められるためには次の6つの点に注意しておくとよいと言えます。
1.既に公表されている著作物を利用すること
2.引用部分と自己の作品部分とが明瞭に区別されていること(明瞭区別性)
3.自分の作品部分がメインであること(自分の作品と引用部分との「主従関係」)
4.引用目的の正当性(引用の必要性)
5.改変をせず引用すること
6.合理的方法で出所を明示すること
今回の争点であるテレビ番組の切り抜きについて、制作サイドが「TVerのURLリンクを貼る(=出所の明示)だけでは不十分である」と言っているのは、上記のように「出所の明示」は引用が認められる要素の一つにすぎず、他の要素を満たしていないことを指摘しているのかもしれません。
*6 公衆送信権 著作物をインターネットなどを通じて公衆向けに送信する権利。SNSへの投稿も含まれる。著作権法第23条で定められている。

