経済も地政学状況も国内政治も、スターマー政権に欧州連合(EU)への復帰を促していると 、ギデオン・ラックマンが2026年4月6日付フィナンシャル・タイムズで論じている。
スターマー首相は国民向けに重要演説を行った。「危険な世界を共に進んで行くために」英国は大胆にEUとのパートナーシップ構築に取り組む必要があると語る等、演説は首相就任以来最も親欧州的なものだった。この演説は、英国がEU復帰に向けた長い道のりに踏み出した重要な一歩として振り返ることになるかもしれない。
トランプは英国のEU接近のための状況作りに大いに貢献した。高関税を課し、英国軍を中傷し、ロシアの機嫌を取る等、その予測不能で侮蔑的なふるまいは英国の支配層を覚醒させた。YouGovの世論調査では、米英が「特別な関係」にあると今も思っている英国民は14%、米国に接近したいと思っている者は18%に過ぎず、他方、57%がEUへの接近を望んでいた。
経済も地政学も国内政治も米国ではなくEUへの接近をスターマー政府に促している。スターマー首相は演説の中で「Brexitが英経済に深刻な損害を与えた」ことを認めている。国民の大多数は今やEU離脱は誤りだったと思っている。
しかし、スターマーの公式の立場は慎重で、EU再加盟どころか、関税同盟や単一市場への再加入も除外している。ただ、政府の重鎮らは、EU単一市場への再加入に伴って貿易や投資がテコ入れされることが究極目標だと思っている。
EU接近の戦略的意義は日に日に強くなりつつある。ロシアがウクライナで戦争を続け、トランプは北大西洋条約機構(NATO)離脱を口にし、英国を「臆病者」とののしる等、欧州の同盟諸国を誹謗中傷している。
米国が欧州から撤退したら、ロシアを抑止するには欧州諸国による集団的防衛しかないことを英国は知っている。英国は兵員数でも、軍事物資や兵器の製造能力でもフィンランド、ポーランド、ドイツ、フランスに大きく依存することになるだろう。他方、欧州諸国も英国を頼りにするだろう。
英国も他の欧州諸国もEUの枠組み外で安全保障について協力することは可能だが、英国がEUに加盟すれば、協力は容易になり、EUが集める数十億ユーロの防衛資金も使えるようになる。
