2026年3月18日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年3月18日

 フィナンシャル・タイムズ(FT)紙の2月13日付け社説が、米国政府はMAGA=Make America Great Again(再び偉大なアメリカを)を世界に拡散しようとして民主主義を毀損している、と主張している。要旨は次の通り。

(ロイター/アフロ)

 1999年に創設された米国務次官(広報外交担当)の本来の使命は、米国の理念と制度を海外に伝え、民主主義の価値を普及させることにあった。過去四半世紀、その中心には法の支配、表現の自由、人権といった普遍的原則であった。しかし、今や、米国政府の公的資金と外交政策は、MAGAの世界観の拡散、欧州の右傾ポピュリストへの接近、そして欧州連合(EU)のテクノロジー規制への対抗に振り向けられている。

 この方向性の変化は偶発的なものではない。1年前のミュンヘン安全保障会議で、ヴァンス副大統領は欧州指導者を批判し、移民政策や言論規制をめぐり不満を公然と表明した。

 最新の米国家安全保障戦略は、欧州が「文明の消滅」に向かう可能性に言及し、その流れに対する「抵抗の醸成」を明記している。ポピュリスト勢力への接近や資金配分は、この戦略的取組の延長線上に位置づけられる。

 同様の議論は米議会にも見られる。下院司法委員会の中間報告は、欧州委員会が長年にわたり言論の自由に制約を加えてきたと主張し、とりわけEUデジタルサービス法を例に挙げている。欧州の規制措置は「検閲」と位置づけられ、米国の民主主義に対する脅威とみなされている。

 こうした政策は、政権に近いハイテク業界の利害とも重なる。トランプ政権と巨大IT企業は、欧州諸国の規制を経済障壁とみなすだけでなく、米国の言論空間への干渉だと主張する。しかしEUや英国の制度は、ヘイトスピーチ、誤情報、デジタル上の搾取行為などから市民を保護することを目的し、その理念は民主主義社会において正当性を有するものだ。

 この対立の結果として生じているのは、相互不信の拡大である。ワシントンが欧州に向けて提示する懸念は、法の支配や民主主義の後退をめぐり欧州が米国に抱く懸念の反転像となっている。


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