ミュンヘン安保会議で通常行われる安全保障や防衛に関する議論とは一線を画すこの演説は、トランプ氏が大統領選挙戦で掲げた移民問題に焦点を当てたテーマに近接する。欧州の自由主義的な政策(SNS規制や寛容な移民政策)を批判することで、次期大統領候補をも念頭に米国内の保守的な支持層に向けて「米国の価値観を守る強い政治指導者」であることをアピールし、トランプ大統領に気を遣ったのではないかという評価も聞かれた。
彼は「左派的・リベラルな政策をとる現在の欧州政府」を、米国の利益と価値観とは異なる敵対的な存在と見なしているが、米国と欧州との亀裂は、現下のロシアや中国の動きに鑑みれば、大西洋同盟関係を不利な状態に置くだろう。ヴァンス副大統領がトランプ後の米国の指導者となる可能性があるだけに、その思考傾向はこの先の世界の戦略的課題ともなり得る。
変わっていないヴァンスの姿勢
本年2月のミュンヘン会議では、ルビオ国務長官は欧州との関係修復を試みたようにも見えた。ルビオの演説は、昨年のヴァンスと比べて表現ははるかにソフトになり、一聴すると、欧州にとり穏やかに聞こえたかもしれない。
しかし、その中身の本質はMAGAを推進するということであり、昨年のヴァンス副大統領の攻撃的な演説と変わりない。大西洋同盟関係のぎくしゃくは続いている。
