2026年4月18日(土)

トランプ2.0

2026年4月18日

 J・D・バンス米副大統領(以下、初出以外敬称および官職名略)は、イランとの21時間に及ぶマラソン交渉を終了し、記者会見に臨んだその頃、ドナルド・トランプ大統領とマルコ・ルビオ国務長官兼大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、南部フロリダ州マイアミで総合格闘技イベントの「UFC327」を観戦していた。一回の交渉で合意に至らないと計算していたのかトランプは、総合格闘技を観戦する姿を映像で映すことで、支持者には「強いトランプ」を、支持者でない米国民には「余裕のあるトランプ」の印象を見せつけたのだろう。

 その背景には、ジミー・カーター元大統領が、イランで米国大使館人質事件が発生した際、ホワイトハウスの執務室に籠もり、米国民に「大変なことが起こっている」という印象を与えてしまったからだ。

 トランプは早速、次の一手として、ホルムズ海峡で海上封鎖に踏み切った。その狙いは複数存在すると考えられるが、その中で特にトランプが重視しているものは何か。     

 また、米国民はホルムズ海峡開放とイランの核兵器開発阻止のどちらを優先しているのか。さらに、バンスはイランとの交渉の決裂に対して、どのようにしてダメージコントロールをしたのか。ルビオは合意に至らなかった交渉をどのように捉えたのか、以下で述べていこう。

(Dilok Klaisataporn/gettyimages)

ホルムズ海峡「逆封鎖」と通航料の問題

 ホルムズ海峡逆封鎖の狙いが、イランが切り札として切った交渉カードを無力化することにあるのは、誰の目にも明らかである。イランの海上封鎖による原油価格の高騰と、それに石油化学工業の原料不足、さらに将来的に払底も予想される懸念が、世界経済を混乱に落とし入れている。それは、トランプにとって自身の足元を危うくすることに他ならない。

 また、米国が同海峡の「ゲートキーパー(門番)」になって、イランに200万ドル(約3億1000万円)の通航料を支払って、ホルムズ海峡を通過する船舶を拿捕し、船舶の管理をする意図もあるだろう。

 加えて、通航料からの収入を止めて、復興資金や戦費に充てようと考えているイランに対して経済的ダメージを与える。そのようにして、イランを再度交渉のテーブルにつかせて、米国のいくつかの要求を呑ませることも可能になる。

 この通航料に関して一言するならば、国際海峡や公海における船舶に対する通航料の徴収は、国際海洋条約法上、違法とされている。しかし、トランプは国際法および国内法よりも自分を上に置いて実利を求める人間である。記憶に新しいことだが、トランプはイランとの「合弁事業」を提案して利益配分をするとまで示唆していた。

 彼は、イラン単独での通航料の徴収には反対だが、米国がホルムズ海峡において利益を得るシステムを構築すれば、11月3日の中間選挙でアピールになると考えているのだろう。また、同海峡を通航するにも拘わらず、イラン戦争に協力をしないNATO加盟国や日本および韓国に「罰」として通航料を徴収すれば、MAGA(米国を再び偉大にする運動に賛同する人々)は賛成すると読んだのだろう。 

 一方、イランは米国ではなく、ホルムズ海峡を挟んで対岸に位置しているオマーンと同海峡を管理することを望んだとみられる。

中国とのパワーゲーム=ホルムズ「封鎖」

 ホルムズ海峡逆封鎖を実施する前日、トランプは米FOXニュースのインタビューで、中国がイランに武器供与を行った場合、中国からの輸入品に50%の関税を課すと圧力と脅しをかけた。

 中国は推定で輸入量全体の10~13%のイラン産原油を海上輸入している。米国は、中国が輸入していた4~5%(同上推定)のベネズエラ産原油をすでに押さえた。以前も述べたが、米国がホルムズ海峡とイラン産原油をコントロールした場合、中国はベネズエラ産と合わせて最大約20%の原油の調達を、米国に依存することになる。これは、間違いなく中国の原油調達の分散化政策にとって痛手だ。

 それをもって、中国からのレアアースの供給を確保し、トランプ支持の農業従事者が望む大豆の購入を果たすためのディールのカードを手に入れることが可能になる。

 世界において米国と中国が勢力圏を分かち合うウィン・ウィン型の「G2」ではなく、米国一国が勝者になる「G1」の実現を夢見るトランプは、世界の原油の支配が絶対条件であるとみている。

 中国はイランに圧力をかけて、米国のホルムズ海峡のイランとの共同管理に反対したと考えられるが、それはこのようなトランプの野心を阻止するためだ。


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