2025年4月、大阪大学大学院工学研究科に「先進海事システムデザイン共同研究講座(阪大OCEANS)」が開設された。背景には、経済安全保障への意識の高まりや国際海事機関(IMO)が50年までに国際海運における温室効果ガス(GHG)排出ネットゼロを掲げていることへの対応としてアンモニアなどの新燃料の開発が必要なことがある。
辰巳晃准教授(左)と、牧敦生教授(右)(WEDGE)
さらには設計・製造段階におけるAI、ヒューマノイドロボットの活用など、造船業界の事業環境が大きく変化していることがある。
本講座には、造船国内トップの今治造船やジャパンマリンユナイテッド(JMU)、日本郵船グループの研究開発会社MTI、船の安全性や品質を評価する日本海事協会が参画している。講座を担当する大阪大学牧敦生教授はこう説明する。
「大阪大学では、『Industry on Campus』というコンセプトで、産学連携プログラムを進めてきました。これまでも単独企業と連携する形での講座はありましたが、複数企業で業界を横断する形で行われるのは極めて珍しいです」
それだけ、造船業界の中で危機意識が高く、大学側にもその認識があるということだ。
かつて、東京大学を筆頭として、全国に「造船8大学」と呼ばれる大学があった。しかし、日本の造船業の衰退と歩調を合わせる形で、大学から「造船学科」という名称が消え、規模が縮小されてきた。
「阪大OCEANSでは、次世代の造船技術を学ぶ学生と企業からの研究員がともに研究開発に取り組んでいます。単独企業だけでは解決できない課題に対して企業を横断して研究していくという目論見です」(牧教授)
