1961年に実現した国民皆保険制度は、医薬品に対する国民の意識を根本から変えた。軽い症状でも医療機関を受診して、医師の処方による「医療用医薬品」を、本人は「無料」(家族は5割負担)で受け取るようになったのだ。これが薬は「買う」から「病院でもらう」という意識に大きく変えた。
しかし同時に、軽症の患者に高額の医薬品を大量に処方することの問題が認識され、処方箋を必要としない医薬品の価値が見直された。そこで、制度の実施と同時期の61年に薬事法が改正され、「富山の常備薬」のような、従来「売薬」とされていた薬が、医師の処方なしで販売可能な「一般用医薬品」として公認されたのだ。
これが現在のOTC医薬品であり、その誕生は公的な国民皆保険制度と、個人の自己判断に基づくセルフメディケーションを区分けし、双方のバランスを維持するための制度的措置といえる。ちなみにOTCはOver The Counter(カウンター越し)の略で、薬局で自由に購入できる医薬品を意味する。
それから半世紀が経過して、少子高齢化の急激な進展に伴い国民医療費は45兆円を超え、制度の持続可能性の確保が急務となり、「軽症の患者に高額の医薬品を大量に処方することの問題」が再認識された。その対策として行われたのが健康保険法の改正であり、その最大の柱は、OTC医薬品と成分や効能が類似する「OTC類似薬」について、患者に追加負担を求める仕組みの創設であり、セルフメディケーションの拡大である。この改正案が今、参議院で審議されている。
ところが、この措置に対して、「受診控えによる重大疾患の見逃し」が起こり、それがかえって高額な医療費を招く「財政的な逆説」が起こるとして、反対の声がある。そのような可能性はどの程度あるのだろうか。
