<本日の患者>
R.G.さん、71歳、男性、元自衛隊将官。
「先生、『OTC』ってどういう意味ですか?」
「『OTC』自体は、“カウンター越しに”という意味の英語“over the counter”の略です。医薬品の場合には、薬局やお店の“カウンター越しに”処方箋がなくても購入できることを意味します。それが何か?」
「なるほど。いやね、この頃ニュースとかで『OTC医薬品』とか『OTC類似薬』とかの言葉をよく聞くでしょ。だんだん何が何だかわからなくなってきちゃって、今日はひとつ診察に来たついでに(あ、失礼!)先生に聞いてみようと思った次第です」
「そうだったんですね。大丈夫です。実は、『OTC』は知っている家庭医でも、このところの社会保障政策の議論には少なからず混乱しているんですよ(笑)」
こんな会話で始まった今回のR.G.さんの定期受診だが、6年前に彼が私の働く家庭医診療所にひょっこり現れた時にはびっくりしたものだ。彼は健康診断で指摘された高血圧と脂質異常について相談するために(私がいるとは知らずに)偶然受診したのだが、私たちにとってそれは、かつて東日本大震災直後の放射能被害の現地調査というミッションを担っていた医師と、復興支援に駆けつけて私のミッションに協力してくれた自衛隊員たちのリーダーとの8年ぶりの再会だった。
以後、R.G.さんはこの診療所に通いながら、律儀に生活習慣の改善に努めている。その甲斐あって、現在彼の心血管リスクはとても低くなっている。
OTC医薬品、OTC類似薬、スイッチOTC医薬品って何?
医薬品は、医師・歯科医師の処方箋や指示によって使用される「医療用医薬品」とそれ以外の医薬品に大別される。
「医療用医薬品」を入手するには処方箋が必要で、それに基づき調剤薬局(保険薬局)から購入する。一方、医薬用医薬品以外の医薬品には処方箋は不要で、自らの判断で、一般の薬局やドラッグストア、最近はコンビニエンスストアやインターネットでも購入できる。この「医療用医薬品でない医薬品」が「OTC医薬品」と呼ばれている。
厚生労働省のウェブサイトで目的の情報へ到達するのはかなり難しい(関係者にはもっと利便性を高めるように改善を強く求めたい!)。「OTC医薬品」についても例外ではなかった。
