2026年4月21日(火)

野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2026年4月21日

 国民党の鄭麗文主席が、同党トップとしては10年ぶりに中国の習近平国家主席との会談に臨んだ。結論からいえば、何が決まったのか、何が語られたのは決して重要ではない会談であった。

(新華社/アフロ)

 共産党が次の台湾選挙では国民党を全面的に押し立て、台湾への政治介入に乗り出す覚悟を決めた、ということが明らかになったことが、会談の最大の意義である。今後の台湾政治は2028年の総統選挙に向けて「民進党VS共産党」という構図のなかで戦われていく可能性が高くなった。

中国との親密さは「選挙毒薬」

 鄭氏の訪中は、その実現自体が唐突であり、多くの国民党関係者にとってすら「青天の霹靂」であった。一見関係が良好なように周囲から思われてきた中国の共産党と台湾の国民党だが、実はこの10年、党主席が訪中していないことに象徴されるように、関係は常にギクシャクしてきた。

 原因は国民党が考える中国との「あるべき距離感」にある。台湾の政党である以上、選挙での勝利が命題であり、中国と仲良くすれば票が減りかねない。

 近年、中国の台湾におけるイメージは悪化の一途をたどっている。それは習近平体制の権威主義化、中国国内の世論統制、香港の民主派弾圧などが重なったためで、国民党には「中国の代理人」だと台湾有権者に思われることを避けたい思いがあった。

 「中国要素」のマイナスが如実に出たのが24年の総統選挙であった。投票直前に馬英九元総統が「習近平を信じるべきだ」とインタビューで発言したことが批判を呼び、国民党の総統候補者の侯友宜氏サイドは「あれで数十万票が逃げた」と悔やんだ。中国との親密さは「選挙毒薬」とも呼ばれる。

 それゆえに、国民党のトップは有権者に過度に親中的だと見られないようにして政権復帰を目指す「現実派」が主流であった。国民党は日本の定義からすれば「親中派」とカテゴライズされる場合も多いが、「現実派」は少なくとも米国、そして、日本との関係が大事だとの前提に立って中国との融和を推し進めるスタンスである。

 現在の政治家でいえば、前述の新北市長の侯友宜氏、台中市長の盧秀燕氏、台北市長の蒋万安氏らがそうした「現実派」にあたり、国民党の中ではメインストリームを形成していた。

 ところが、昨年10月の党主席選挙で、現実派の大御所である郝龍斌氏を、泡沫と見られていた鄭氏が予想を裏切って大逆転で勝利してしまった。


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