老人バックパッカーはダラダラと駄弁って暇潰し
60歳で定年退職してからバックパッカーを始めて、基本的には毎年8カ月~9カ月を海外放浪するという生活を12年間続けてきた(注:コロナ禍の2年間は茅屋で蟄居していた)。家人はよくも飽きないものだと呆れているが、今でも世界地図を眺めているとシベリアや、中央アジア、中南米など未踏の世界に想いを馳せていると年甲斐もなくワクワクする。
時間は余るほどあるが、お金のない無職老人の海外放浪旅は冒険や絶景やグルメやアクティビティーやエンタメなどとは縁遠い。どちらかと言えば淡々と、いささか退屈なものである。やることがないので、旅人や現地の人と出会ってダラダラと目的もなくおしゃべりして時間潰しすることが多い。そして面白いことにそうした無目的な会話から、気づきや新たな学びを得ることも少なくない。
ドイツ人年金生活者の海外放浪生活
11月12日。中国との国境の町ランソンのホステルで、ケルン出身の67歳現在独身のディーンと相部屋となった。ディーンはホステルに長逗留しており、日課の散歩以外はホステルのベランダでぼんやり景色を眺めながら英語のラジオニュースを聞いて時間を潰していることが多い。
ディーンは“健康上の理由”から58歳で早期退職して世界放浪を始めたという。筆者には放浪旅ができるのだから健康上は何の問題もないように思えたが。ディーンはインドが気に入りゴア近郊の海辺にアパートを借りて住んでいる。インドでは年間最大180日間しか滞在できないので、残り半年は他の国で時間を潰しているという。今回はベトナムで時間潰しをしているが、3カ月でベトナムのビザが切れるので、ランソンからバスで数時間の中国国境(友誼関)を越えてビザを更新してきたという顛末だ。
ドイツはロシアのウクライナ侵攻で対ロ経済制裁をしたが、高価な代替エネルギーを輸入することになり、ブーメラン効果で国民負担が限界に達していると嘆いた。「そもそも緑の党に振り回され、原発全廃をしたのが戦後最大の政治的ミスだ。電気代が高騰した結果、フォルクスワーゲン始め基幹産業が海外移転している。総合化学メーカーのBASFは1社だけで、スイス1国分のガスを消費している。ガス代の高騰により、全ての生産拠点をドイツから移転した。2035年にガソリン車をゼロにするというヒステリックな政策により、中国製EVに自動車市場を侵食された。中国の戦略にEUが引っかかってしまった」と痛烈に批判。
ディーンの指摘については、多くのドイツ人バックパッカーから世界各地で何度も繰り返し聞いているので、ドイツ人の平均的な民意なのだろう。EUの盟主で1人当たり国民所得が5万6000ドルと日本の1・7倍もあるドイツでさえも、国民の負担感が急増しているようだ。それでも58歳で早期退職しても年金収入だけで海外で遊んで暮らせるのだから、やはりドイツの老人は恵まれている。
