中国が7月初め、太平洋での潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射実験に成功したことは、米国の核優位性への挑戦を意味するだけでなく、我が国にとっても海上自衛隊対潜作戦(ASW)の根本的見直しを余儀なくされる重大な意味合いを持っている。
世界トップクラスだった日本の対潜作戦能力
米海軍と海上自衛隊は、前世紀までの米ソ冷戦時代を通じ、緊密な協力体制の下で太平洋に遊弋(ゆうよく)するソ連海軍戦力の監視・警戒に当たってきた。
共同作戦の中で米国が特に日本側に期待を寄せてきたのが、ウラジオストックを拠点とするソ連太平洋艦隊のSLBM搭載潜水艦(SSBN)および攻撃型潜水艦の行動を監視・追尾する海上自衛隊の対潜作戦(Anti-Submarine Warfare=ASW)能力だった。
当時、筆者は新聞社のワシントン特派員として、国防総省(ペンタゴン)に頻繁に出入りしていたが、取材対象者だったアジア太平洋担当国防次官補や日本部長らから「日本のASW能力は世界でもトップクラス」「広大な太平洋において米ソ核パリティを維持する上で海上自衛隊との防衛協力は不可欠」などと何度も聞かされてきた。
その際に、さらなる日本への期待として「米ソ有事となった場合、日本側が3海峡(宗谷海峡・津軽海峡・対馬海峡)を封鎖し、ソ連艦隊とくに潜水艦の太平洋進出を阻止できる態勢をしいてもらいたい」と注文をつけてきたこともあった。
そして実際にその後、「3海峡封鎖能力」の達成が海上自衛隊の重点目標の一つとなっていった経緯がある。
ASW能力の中核をなすのが、海中、海底を移動する多くの潜水艦の中から対象艦を絞り込み探知・追尾する作戦だ。そのためにはできるだけ早い段階で、①どこの国の所属艦か②それは洋上艦船や潜水艦を狙う攻撃型潜水艦か、それともミサイル発射潜水艦か――などをいち早く識別する必要がある。
