金融機関のビジネスモデルが転機を迎えている。「失われた30年」を経て、「金利のある世界」の中で「AI活用」や「銀行業における一般持ち株会社化」など、金融業のあり方自体が変わる可能性がある。金利の上昇で預金を原資に融資で利益を確保する伝統的なビジネスモデルで大きく改善した収益を、海外を含む成長するマーケットやAIなどの最新技術の導入、サイバーセキュリティ対策などに投入できる、一方で、国内は人口減少など多くの課題に直面しており、地域金融機関は地元経済の持続的な成長と両立するビジネスモデルが求められる。
拡がるビジネス領域
9月18日、日本銀行は政策金利を1.25%に引き上げ、31年ぶりの高い水準となった。金融機関は「金利ある世界」の進展で利益はさらに拡大。M&Aや事業承継などによるコンサルティング業務による手数料収入も期待できる。また、15年頃から本格化したフィンテック企業との連携、改正銀行法(16年)で認められた「金融業高度化等会社」では、地域商社や人材ビジネス、発電事業、広告事業なども新たな収益手段だ。
そして、「銀行API(Application Programming interface)開放」によりフィンテック企業だけでなく一般企業も銀行データを利用できるようになり、異業種の提携で新たな金融サービスも登場した。金融機関のビジネスモデルは大きく転換できる条件が整っている。
金融持ち株会社から一般事業持ち株会社へ
現在、メガバンクなど大手金融機関は金融持ち株会社を設立し、傘下に子会社を有し様々なビジネスを展開。特に、メガバンクグループは現地金融機関などを買収し、海外部門で収益力強化。三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループは、投資家説明会などで資産回転モデル、アジアビジネス、ウェルスマネジメントなどを強調する。大手地域金融機関でも持ち株会社設立が増え、アジアを中心に現地に進出している日系企業を対象にビジネスを展開。
ただ、国内では中小企業や個人、地公体取引に注力する一方で、東京、大阪、名古屋などの大都市圏で「越境貸出」を推進するなど、多くの地域銀行は地元と大都市圏という両面で事業を拡大している。
全国銀行協会は今年3月、「中長期的な金融仲介の在り方検討WG」の報告書を公表。企業による成長投資の好循環を実現には中長期的な金融仲介機能を適切に発揮が必要で、日本経済の持続的な成長に不可欠と指摘。そのためには将来的に銀行持ち株会社グループの枠組みを超えて、非金融事業の展開を提言した。
「預金を原資としないビジネスモデルの一般持ち株会社を検討。地域社会とステークホルダーをつなぐアレンジャーとして様々なシナジーを発揮できる」(全銀協)としている。具体化に向けた議論は今後となるが、地方経済の活性化に取り組む地域金融機関の一部には、「地域の鉄道会社とのグループ化は一案」(大手地方銀行首脳)など前向きな意見が多い。
地域金融機関、地方創生を根幹に
地域との共生が避けられない地域金融機関では、人口減少・少子高齢化、地元産業の衰退などの課題に直面している。地域経済活性を目的に政府が打ち出した「地方創生2.0」(25年6月)は、地域とともに持続的発展を目指す地域金融機関にとって、ビジネスモデルの根幹に据える必要がある。4月から新たな経営計画をスタートした地域銀行でも具体的に盛り込んでいる。地域特性を生かした「産業クラスター」の育成だ。岩手銀行は重点領域に「産業クラスター×進出企業の『集積・高度化』を支援」として、自動車や半導体などの分野を掲げている。
また、今後のカギを握るのがBaaS(Banking as a Service)だ。金融機関が提供するサービスを企業など提供するサービスに組み込む仕組み。近年は行政や企業を一緒に地域DXを進める地銀等が増えている。特に注目されているのが「エンベデッド・ファイナンス」(組込型金融)。銀行口座の決済機能と行政や企業の様々なサービスと連携するものだ。具体的な事例は今後となるが、ポイントは金融機関主体というよりも、金融機能をどのように組み込んでいくかという「ビジネスモデルの発想の点検」が必要だ。
