トランプ政権は、西半球における中国の影響力拡大の阻止をラテンアメリカ政策の柱として、これまで中国の「一帯一路」構想に基づく巨大プロジェクトを目の敵としてきた。これに対し、Foreign Affairs(電子版)に8月3日付で掲載された、米国務省アドバイザーを勤めた地政学コンサルタントのコテ=ムニョスによる論文‘China’s Quiet Quest to Dominate Latin America’は、中国は既に戦略を変えており、国家間の融資による大規模プロジェクトではなく中国企業による企業買収、安価な製品やシステムの提供といった商取引を通じて、また、中央政府ではなく州や市政府レベルでの小規模プロジェクトを積み重ねる手法に転換したことを指摘し、その手法が大きな成果を収めつつあると警鐘を鳴らしている。この論文は、そのような事実関係を総括し、米国当局や現地政府に警告を与えるものとして有意義であろう。
論文が指摘するような中国の手法の利点は、国際社会や米国当局の注目を浴びることなく、都市交通や警備システムといった国家の重要な分野で静かに浸透し、気付いた時には、その分野での中国への依存を確立することができることだ。そして、中国は必要が生ずれば、そのような依存関係を効果的な報復や圧力の手段として活用することができるので、これら諸国は中国との関係において極めて脆弱な立場に置かれることになる。
特に、治安維持に関連する監視システムや警備用の装備などが、中国における警察官の研修などともセットとなって、多くのラテンアメリカ諸国に供給されており、中国政府はもはや隠すこともなく、昨年12月に公表された対中南米政策白書では、治安維持面での協力をこの地域での協力の中核に位置付けているという。
コテ=ムニョスは、上述の論文において、米国もこのような中国のやり方に対抗してこの地域の州や市政府のニーズに応じた協力を行う必要がある、と結論付けている。これは確かに妥当である。しかし、独裁国家中国とは違って、米国は自国企業を国策に沿って活用することは簡単ではなく、中国のように柔軟に補助金を付けることもできないであろう。
