また、中国が戦略を変えたとしても「一帯一路」で実現した大規模港湾インフラや資源プロジェクトはこれからその効果を発揮するものも多い。例えば、中国企業が関与しているラテンアメリカの主要港湾施設の内17カ所では中国企業が管理運営に支配権を有しており、その軍事利用や情報管理、恣意的な取り扱いが懸念され、これらを通じた影響力の拡大の阻止は引き続き重要な課題である。従って、中国にとっては現在重点を置いている小規模プロジェクトと一帯一路のメガ・プロジェクトの運用は車の両輪であり、米国は双方に対峙しなければならない。
トランプ政権の〝対策〟
トランプ政権には、中国のようなきめの細かい対応は無理であろうが、ラテンアメリカの右傾化の波を捉えて、麻薬組織対策や犯罪抑制への協力を名目に、「米州の盾」構想で、友好諸国との間で治安面での協力強化を打ち出しており、いわばトップダウンで米国式システムや機材を売り込み、治安面での中国依存に対抗していく方針である。これに加えて、州や市政府レベルに直接警備用システムを売り込む努力やそのための特別な補助金制度のようなものも必要であろう。
7月15日に公表されたピュー・リサーチ・センターの世論調査では、世界的傾向として中国への好感度が米国を上回ったことが話題となった。調査対象となった諸国のうち、ラテンアメリカ主要6カ国を見ると、一般的な好感度では、中国が米国を上回ったのはメキシコだけで、コロンビアはむしろ米国の方が高く、残りの国では拮抗しているとの結果であった。
経済面での信頼度は中国の方が極めて高いが、メキシコやブラジルなどには国内産業保護の観点から中国への警戒感があり、また、ペルーやアルゼンチンの一部には中国の経済的支配に対する懸念もあるので、トランプ政権としても中国の影響力拡大の意図についての注意を喚起し、過度な中国依存からの脱却を働きかける余地はないわけではないと思われる。そのためにはトランプが改めて地域諸国により友好的に対応することが最も効果的であろう。
