中国で開発された人型ロボットがマラソンをしている映像を見た。走り方、身体の動かし方も人間そっくりで、よくできているものだと感心した。そしてすぐにこの種のロボットが林業に適用できないものかと考えてしまう。悪い癖だ、いまだに林業を何とかしようと考えている。
例えば下刈(したがり)である。造林地に植えられた苗木に覆いかぶさって、その成長を阻害する雑草木を刈り払う作業だ。
当然雑草木の成長が旺盛な真夏の作業である。酷暑の炎天下で、立っているだけでも辛い急傾斜の山の斜面を這い回る。
斜面の状態は極めて不整形で、細かい凸凹があり、切り株や末木枝条(すえきしじょう:末木や枝、枝に着生した葉)、端材がそこら中にあって、足を取られる。そうした中で、苗木を切らないように雑草木やつる類を刈り払うのだ。
人が行う作業のうちで最も過酷と言ってもいい下刈作業だけに、これまでも機械化の試みは連綿と続けられてきた。急斜面を上下し、あるいは横移動し、転倒しないようなタイヤや履帯で自走する芝刈り機的なロボットがあるが、写真1を見てもわかる通りで、およそ実用的でないことは読者諸氏にも一目瞭然であろう。
実際の造林地は写真2のようであり、機械を転ばないようにするだけでやっと、ましてや苗木に損傷を与えず、雑草木を刈り払うなどという動作は不可能に思える。
例の中国製の人型ロボットなら、このような斜面を動き回るだけならすぐにできそうだが、刈払機を持たせると重量が増加し、不安定化してすぐに転倒するだろう。また、どんな高度なセンサーをつけても、苗木を残して雑草木だけ刈払うのは不可能だし、苗木に巻きついたつる類を切ることなど及びもつかない。
ここまで延々と林業の機械化やAI化が容易でないことを述べてきたのは、林業が人間しか行えない究極の作業だということを知っていただきたかったからである。知的労働ではAIに劣等感を抱くが、造林作業では優越感に浸れる。
AIやロボットが蔓延って、人間力が問われる世の中であるが、林業の世界に生きていると人間の高性能さが改めて感じられる。どのような地形にも対応できて、苗木を誤伐することのないような繊細な作業ができるのだ。
造林作業など単なる肉体労働ではないかと軽蔑してもらっては困る。ただ雑草木を刈り払っているだけではないのだ。雑木とはいうものの成長すれば価値が高い樹木も含まれていて、これらを刈残せばスギやヒノキといった植栽木だけでなく、多様で価値の高い混交林に誘導できるのだ。
今日的には、刈り残しがあると補助金が交付されないという硬直的な仕組みがあって、全部刈ってしまうようだが、これは造林技術ではない。このような雑木の選別刈りは、高性能な人間のセンサーがあって初めてできるものなのだ。そういう意味で、造林は高度な知的作業でもある。
