実はとても面白い作業
熱中症になるような炎天下で、雑草木を刈って何が面白いのか。ホワイトカラーの人、画面を前に仕事をしている人間、自然とかけ離れた都会人たちはそう思うかもしれない。それが面白いのだ。
まあやってみて。斜面に折り敷かれた雑草木から顔を出した苗木が喜んでいるのが分かる。刈り払った跡がだんだん増えていき、効果が一目瞭然なのである。
これほど達成感を得られる作業はないのだ。精神労働では得られない物理的な達成感が造林作業にはある。ボランティアで下刈体験をした人たちは、普段の事務作業のストレス解消になるようで、ほとんどが「もっとやりたかった」と言って帰る。
下刈によらず、地拵え(じごしらえ、伐採した木の枝や灌木を取り除く)、植付、つる切、除伐(他の樹木を刈り払う)、間伐と造林の作業種は多いが、いずれも人の手作業でなければできない。もっとも道具は、鎌や鉈から刈払機やチェーンソーとエンジン動力に代わってはいるが、これらの機械は所詮手工具の延長に過ぎず、ベースマシンである人の移動に頼っているところは同じなのである。
林業労働の良いところは、野外で、大自然の中で、汗だくになって、肉体疲労の果てにある快感だ。一気に飲み干すビールのうまさ、干からびた身体のすみずみまで水分が行き渡る実感を想像していただきたい。これは絶対に精神労働からは得られない快感である。
こんなつらい肉体労働だから、1日やったら次の日は行きたくなくなるだろう。それが次の日になるとやっぱり行くのだ。身体が馴化してくるのだろうが、登山と似たようなところがある。
同じ作業であっても、作業対象となる林地の様相は、日々、いや一歩一歩違う。この変化に富んだ作業環境が辛い労働であっても心身を飽きさせないのである。
しかも雑木の樹種選定などはAIでも及びつかない知的労働なのだから、他業種に誇れる技能である。こんなこと言ったところで、林業労働力が増えるわけでもない。
下刈など温暖化で酷暑日続出の現代で可能な労働ではないと思う。労働基準法で禁止していいくらいの危険な作業を国の補助事業で行うなど、もはや現実的ではない。
かつて失敗した作業方法を“復活”させようとする森林・林業白書
令和7年度森林・林業白書では、「造林の省力化・低コスト化」の項で、「造林初期費用のうち3割以上を占める下刈については、植栽木が成⾧して雑草木による被圧がなくなるまでの5~6年程度、毎年実施することが一般的であるとされてきたが、下刈回数を削減することができれば、造林の省力化・低コスト化につながる。これまでの研究において、植栽木の周囲に雑草木が繁茂していても植栽木の樹冠が雑草木に完全に覆われていなければ、顕著な樹高成⾧の低下はみられないとの報告があり、雑草木との競合状態に応じて実施の要否を判断することで、下刈回数の削減が可能となる」としている。
筆者のような古株の林業者ならそんなことは50年前から当たり前、何を今さらという思いだ。下刈の研究報告などその頃からある。それでも理屈どおりに出来なかった理由は、補助金にある。
