2026年8月24日(月)

Wedge REPORT

2026年8月24日

 森林組合や造林業者は、補助金が欲しいので、雑草木の少ない植栽当年や雑草木から植栽木が突き出た5、6年目で、やらなくてよい下刈を行うのだ。まあいつもつらい仕事をしている現場人たちの気持ちも分からぬではない。

 そういう実情をさておいて下手な理屈を白書で述べるより、現場の指導を徹底することが先決であろう。自らの恥をさらしているようなことを白書に書くべきではない。

(令和7年度森林・林業白書より) 写真を拡大

 続いて図のような下刈の仕様が述べられている。普通は全刈なのだが、植栽列だけ刈る筋刈、植栽木の周囲だけ刈る坪刈の方が、刈払面積が少なくなって効率的だと言うのだ。

 昔の技術者も考えていないわけではない。こんなことも50年前から検討されていた。しかし、それが一般化しなかったのにはちゃんとした理由があるのだ。

 筋刈、坪刈を始めた当年度は一定の効率も上がるのだが、翌年度以降がいけない。周囲に刈残された雑草木が大きく育ち、筋間、坪間の移動が容易でなくなり、効率が悪くなったのだ。そのため結局全刈に戻ったのである。

 とっくの昔にお払い箱になった作業仕様をなぜ復活させようとするのか、疑問である。現場技術の伝承がトップの行政と断絶している典型的な事例である。

安易な植栽本数の削減策

 白書では、植栽密度(1ヘクタール〈ha〉当りの苗木の植栽本数)の削減も推奨されている。植栽密度を疎にすれば早く太って、短い育成期間で伐採できるだろうという単純な発想である。ところが造林においては、植栽密度はそうそう単純な問題ではないのだ。

 温暖多雨な日本の林地では、放置しておけば雑草木が繁茂する。そこに人間の好みのスギ、ヒノキなどの針葉樹を育てるわけだから、競合する雑草木を下刈や除伐で除去・抑制してやらねばならない。

 雑草木は地表に陽光が当たる限り、繰り返し生えてくるから、これを抑制するには地表を暗くしてやらねばならない。そのために林地の上空を植栽木の樹冠(枝葉)で隙間なく覆い、陽光を遮断してやる必要がある。この状態を林冠の鬱閉(うっぺい)と呼んでおり、初期段階の人工林はとりあえず鬱閉を目指しているのだ。

 したがって、植栽密度を密にすれば早く鬱閉し、疎にすれば鬱閉が遅れる。下刈、除伐を早く終了させようとすれば、密植の方がよい。しかし、苗木を多く植える分だけ経費がかかる。疎植にすれば、その反対で下刈、除伐の経費が掛かり増しになる。

 もう1つ植栽密度は樹木の品質に大きくかかわる。密植だと太りが悪いので年輪が緻密になって強度も増す。疎植だと太りが早く年輪は粗く強度は劣る。密植の代表は奈良県の吉野林業で1万本/haで間伐を繰り返して小径材→柱材→板材と樹齢に従って用途を変える。疎植の代表は宮崎県の飫肥林業で1千本/haで舟材を育てた。


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