アメリカ、メキシコ、カナダの3カ国共催で開催されたサッカーの2026年FIFAワールドカップ(W杯)は、史上最大規模の大会として歴史に刻まれた。48カ国・104試合という新フォーマットの採用、総観客数680万人超、大会収入130億ドル(約2兆円)という空前の経済的成功は、FIFAが長年描いてきた「世界最大のスポーツイベント」の理想形を現実のものにした。
しかし、この大会が残したものは経済的成功だけではない。政治とスポーツの距離、商業化の加速、競技環境の変化、スポーツ科学の進歩、そして48カ国制による勢力図の変化――。2026年大会は、これまで積み重ねられてきたワールドカップの価値観を大きく揺さぶる転換点となった。
米国の有力紙『The Wall Street Journal』が「アメリカのソフトパワーを象徴する大会」と評した一方で、『The New York Times』や『BBC』、『ESPN』などは大会運営や政治介入に対して厳しい視線を向けた。26年W杯は、「史上最高のビジネス」と「最も議論を呼んだワールドカップ」の両面を持つ大会だったと言えるだろう。
大会最大の汚点となりうる「バログン事件」
今大会最大の論争は、アメリカ代表FWフォラリン・バログンの退場処分を巡る一連の出来事だった。決勝トーナメント1回戦のボスニア・ヘルツェゴビナ戦で一発退場となったバログンは、本来であれば次戦ベルギー戦を出場停止となるはずだった。しかし、その処分がFIFAによって「1年間の執行猶予」という異例の措置へ変更される。
問題視されたのは、その過程だった。複数の海外メディアによれば、ドナルド・トランプ米大統領がFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長へ直接働きかけ、「我々のベストプレーヤーを出場させるべきだ」と強く要求。その後、処分が覆されたことで、「政治が競技運営へ介入した」という疑念が一気に広がった。
