下水道管の老朽化が進んでも、人口規模、財政余力があれば多少の使用料金の値上げがあったとしても、不具合がある場所から粛々と改築、修繕が行われていく。そのため、下水道が維持されていることを実感することは少ない。
だが、行政から「下水道を維持していくにはコストがかさむので、各戸に浄化槽を設置してほしい」という要請があったらどうだろうか?人口の多い都会で浄化槽を設置するのは非効率なので、想定質問としては妥当ではない。だが、それまで享受していた、今後も得られるはずだった行政サービスがなくなってしまうとなると、不満を持つ人が出てきてもおかしくない。実際にそうした変化に向き合っている町がある。
伊豆半島の最南端に位置する静岡県南伊豆町。JR三島駅から車で2時間ほどの場所だ。この町の入間地区(漁業集落、定住人口133人)では、全国ではじめて漁業集落排水施設(下水処理場)を廃止して、各戸に「合併浄化槽」(し尿を溜め、生活排水を浄化するタンクを各戸の地面に埋める)を設置した。入間地区に漁業集落排水施設が整備されたのは1986年。当時の人口は約260人。夏場には1万人程度の海水浴客が訪れていた。そこで1010人の処理能力を持つ下水処理場が整備された。
浄化槽に転換する設置費用は行政が負担してくれるにしても、漁業集落排水施設とは違い、点検やくみ取りが必要となる。集落の住民から不満は出なかったのだろうか。南伊豆町上下水道経営係・主任主事の黒田利章さんはこう振り返る。
※こちらの記事の全文は電子書籍「下水道からの警告 地下空間の声を聞け」で見ることができます。

