2026年8月31日(月)

商いのレッスン

2026年8月31日

◆今日のお悩み
賃上げ、人手不足、社会保険料負担の増加などで、人件費が年々重くなっています。利益を確保するには、少ない人数で仕事を回し、省人化を進める必要があると感じています。一方、人を減らせば商品やサービスの質が落ち、お客様が離れてしまう不安もあります。経営者は、人件費をどこまでかけるべきなのでしょうか。
台北の鼎泰豐(StephenBridger/gettyimages

 台湾・台北市。昼時の点心料理店「鼎泰豐(ディンタイフォン)」は多くの客でにぎわう。厨房では職人が次々と小籠包を包み、ホールではスタッフが客席の間を行き交う。

 箸を落とせば、頼む前に新しい箸が届く。水の残り具合や食事の進み方にも目を配り、手が止まれば、何か困っていないかと表情まで見る。

 経営者がこの光景を見れば、こう考えるかもしれない。「もう少し少ない人数で回せないのだろうか」と。

 原材料費、光熱費、人件費は上がり、人手不足も深刻だ。セルフレジ、モバイルオーダー、AI、ロボットなど、省人化を可能にする技術も広がっている。少ない人数で同じ仕事ができるなら、その方が生産性は高い。

 これは経営として当然の発想である。ところが鼎泰豐は、人への支出を厚くしてきた。2019年に台湾のビジネス誌「商業周刊」が報じたところでは、食材費は売上高の約23%、人事コストは約56%。単純に合計すれば約79%になる。

 人件費率56%。この数字だけを見れば「非効率ではないか」と感じるだろう。だが、学ぶべきは56%という比率ではない。これだけの支出を、どう顧客価値と収益へ変えているのかという経営の仕組みである。経費を一律に削るのではなく、競争力を生む費用を見極める視点が必要になる。


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