2026年9月20日(日)

Wedge REPORT

2026年9月20日

 アメリカで最も権威ある医学賞とされる「ラスカー賞」を、筑波大学の柳沢正史教授と中外製薬の研究者ら3人が受賞した。柳沢教授は睡眠の制御に関わる「オレキシン」という物質を発見し、突然、強い眠気に襲われて眠り込んでしまう「ナルコレプシー」という睡眠障害にこの物質が関わっていることを突き止め、治療薬の開発につながったとして、「基礎医学賞」に選ばれた。

(Kiwis/gettyimages)

 睡眠研究の重要性が世界的にも評価されたと言える。睡眠は毎日、何気なく行っていることだが、そのやり方や時間、質によって、疲れの取れ方や起きている時のパフォーマンスが大きく変わる。それは、経済損失を生み出すことにもなるし、病気の改善にもつながる。

 睡眠に関する記事5本を紹介する。

<目次>

日本経済停滞の要因は「睡眠不足」にある!(2024/01/25)

眠れる者が、最後に勝つ!「睡眠は時くすり」山師のガンファイター、回復力の正体(2026/02/07 )

大谷翔平の睡眠時間は10時間、日本人の平均は?「睡眠不足の国」日本の“誤解” …「睡眠障害」という新たな診療科で改善はできるのか(2025/10/19)

波紋を呼ぶ高市首相の「睡眠時間0~3時間」投稿…精彩欠いて責任を果たせないのは本末転倒!(2026/08/03)

この症状は睡眠時無呼吸症候群なのか?簡単ではない診断とマネジメント、家庭医としてのアプローチとは(2025/04/27)

日本経済停滞の要因は「睡眠不足」にある!

(fizkes/gettyimages)

 「睡眠」の道を究めることになった理由を問われることがある。これは「偶然」としか答えようがない。

 1998年、新しい脳内物質「オレキシン」を発見したが、その機能・役割が全く分からなかった。そこでオレキシンを欠乏したマウスをつくったところ、一見何の異常もなく健康だった。夜行性であるマウスを夜間に観察していると、突然眠ってしまう現象に出くわした。こうして、オレキシンの役割が「睡眠覚醒の制御」であることが分かった。

 こうして、幸運にも睡眠メカニズムの解明や不眠症の治療薬開発に貢献することができた。それまでは自分自身でも睡眠の道に進むとは思ってもいなかった。

 睡眠に関する詳しい知識がない中で、それまでと全く異なる研究分野に進むことは、当然勇気も必要だったし、チャレンジングだった。それでも背中を押してくれたのは、渡米してからメンターとして指導してくださった二人の師匠(85年にノーベル生理学・医学賞を受賞したゴールドスタイン教授・ブラウン教授)の教えがあったからこそで、彼らが頻繁に口にしていた「テクニカルカレッジ(専門的な度胸)」という言葉は特に印象に残っている。今思い返すと、彼らは忙しい素振りを見せない人だった。アポイントをとらずとも議論を歓迎し、フラットな立場で接してくれ、フィードバックをくれた……

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眠れる者が、最後に勝つ!「睡眠は時くすり」山師のガンファイター、回復力の正体

(Daniel Garrido/gettyimages)

 がん治療という言葉には、どうしても「攻め」の響きがある。強い薬、切る手術、放射線。だが、実際に何度も病室の天井を見上げる立場になってみると、勝負を決めるのはむしろ「守り」だと分かってくる。

 その中でも、最も地味で、最も強力な武器が睡眠である。京都では昔から、病気も失恋も「まず寝なさい」と言われてきた。眠れば心も体も少し整う。理由は分からなくても、経験的に皆が知っていた。

 今になって思えば、これは科学以前の叡智だったのだろう。睡眠は、まさに「時くすり」なのである。

 私は子どもの頃から、驚くほどよく眠る子だった。夜になると布団に入って数分で落ち、朝は「よく寝たなあ」と言いながら起きる。実家は静かで、夏は蚊帳、冬は重い布団。睡眠環境という言葉など知らなかったが、「眠る条件」は自然に整っていた……

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大谷翔平の睡眠時間は10時間、日本人の平均は?「睡眠不足の国」日本の“誤解” …「睡眠障害」という新たな診療科で改善はできるのか

(RyanKing999/Pornpak Khunatorn/gettyimages)

 「24時間働けますか」と、寝る間も惜しんで働くことをもてはやしたのは今や昔。睡眠不足は、仕事の能率・生産性を低下させ、事故や病気を誘引するなどさまざまな悪影響が指摘されている。適切な睡眠を取ることは誰にとっても大事なことであるという共通認識が持たれるようになっている。

 しかし、日本人の平均睡眠時間は経済協力開発機構(OECD)加盟国中最下位で、多くの人が十分な睡眠をとれていないのが現状だ。さらに、不眠などの症状に悩んでいても、どの診療科にかかればよいか分からない医療アクセスの悪さも指摘される。

 こうした状況を改善すべく、厚生労働省は「睡眠障害」を正式な診療科名として加えるかの検討を開始した。国民の健康と生産性の向上に向け、睡眠医療の体制整備がようやく本格的に動き出す……

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波紋を呼ぶ高市首相の「睡眠時間0~3時間」投稿…精彩欠いて責任を果たせないのは本末転倒!

首相官邸ホームページより

 「睡眠時間0~3時間」という高市早苗首相のSNS投稿が波紋を呼んでいる。私生活の一端をも晒した率直すぎる投稿に対して、「長時間労働を強いられている人への配慮に欠ける」、「危機管理上問題だ」など、批判が少なくない。

 内閣総理大臣の印綬を帯びたからには、肩代わりしてもらえることは人にまかせ、睡眠、休養を十分に取り、天下国家に思いを致し、危機対応に備えるべきだろう。 

  7月28日、「令和8年熊本地震」の発生を受けて、高市首相は随時、マイクの前で被害状況、救援活動などについて説明した。「睡眠0~3時間」問題が報じられた直後だけに、首相の様子をはらはらしながら見ていた国民も少なくなかっただろう……

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この症状は睡眠時無呼吸症候群なのか?簡単ではない診断とマネジメント、家庭医としてのアプローチとは

(amenic181/gettyimages)

<本日の患者>
I.Y.さん、41歳、男性、新聞社政治部記者。

「何か疲れが取れなくて、いつも眠たいんです。夜は眠りが浅くて、何度も目が覚めます」

「そうですか。奥さんから何か言われることはありませんか」

「いびきがうるさいって言われます。自分じゃわからないんですが、横を向いて寝るといびきがなくなるそうです」

 I.Y.さんは、妻と小学校に通っている2人の娘たちの4人暮らしで、私が働く家庭医診療所を家族ぐるみで利用している。これまでも4人の病気や健康の問題で色々な相談に乗ってきた。かれこれ10年ほどの付き合いである……

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