太平洋クロマグロの国際管理が増枠を巡り揺れている。2026年7月に開催された国際会議で日本は増枠を目指し交渉を進めていたが、土壇場になってメキシコの反対でとん挫、先日オンラインで開催された再開会合で漁獲枠算定のための枠組みが合意されたものの、実際の増枠最終化にはさらなる会議開催と参加国のコンセンサス(全会一致)による合意が必要になってくる。
筆者は7月および先日開催された国際会議には政府とは独立した立場のオブザーバーとして参加した。本稿では太平洋クロマグロ増枠問題の背景と交渉のポイント、今後の課題について説明を試みたい。
厳しい漁獲制限で回復したクロマグロ資源
7月に長崎で開催(オンライン併催)された会議の名称は、「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委員会会合」および「全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)・中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)合同作業部会会合」と、大変長い。これには理由がある。
太平洋のカツオ・マグロ類は、西半分がWCPFC、東半分がIATTCという国際漁業委員会によって別個に管理されている。太平洋クロマグロ(日本周辺海域で生まれる)の一部は、はるばる太平洋をわたって米国西海岸やメキシコ沿岸にまで達するため、双方の機関で一貫した管理措置を取るよう調整する必要がある。
また、WCPFCでは北緯20度以北の資源については、WCPFCの下に設けられている北小委員会でコンセンサス合意を取った後、WCPFC本委員会(毎年11~12月頃開催)で管理措置を採択することになっている。このため、太平洋クロマグロの管理については、WCPFCとIATTCの合同作業部会で議論し、直後にWCPFC北小委員会を開催して太平洋クロマグロおよびその他の資源について話し合うことになっている。
太平洋クロマグロは、2010年代はじめには資源が初期資源量の2%程度という危機的な水準にあった。この資源を一番多く漁獲してきたのは日本であり、漁獲制限すれば最も影響を受ける。
WCPFCでは加盟各国から「管轄魚種でこのようなまでに資源が減ってしまったのは太平洋クロマグロだけだ。親魚の量を初期資源量比で20%まで回復させる措置をとるべきだ」との声が高まったのに対し、日本は「そんなに高い水準になったことは漁獲データがある1950年代以降ほとんどない」などとして受け入れを拒否していた。しかし、日本が頑なな態度を崩さなかったことも他のWCPFC加盟各国は強く反発、日本は加盟各国から批判の十字砲火を浴びる形で資源回復措置の受け入れを余儀なくされた。(詳細は拙稿「クロマグロの科学的管理を阻む者は誰か
国際会議で増幅した水産庁への不安」を参照されたい)。

