躓きの石となった漁獲インパクト比
だが、ここで躓きの石となったのが、日本・韓国・台湾が面する西太平洋側と、米国・メキシコが面する東太平洋側との比率をどうするか、という点だった。
WCPFCの下での資源評価によると、西太平洋と東太平洋でのクロマグロ漁獲が資源に与えるインパクト(漁獲インパクト)の比率は、22年現在、西太平洋83%、東太平洋17%となっている。こうした現況を鑑み、西太平洋側の日本や韓国、台湾は採用される資源管理の枠組みでは、西太平洋と東太平洋の漁獲インパクトが80対20になるよう主張した。他方、以前には米国が西太平洋側で太平洋クロマグロを相当量獲っており、西太平洋側の漁獲インパクトが70年代には40%、80年代前半でも30%程度であったと推定されている。米国やメキシコは、こうした過去の経緯を踏まえ、以前より西太平洋と東太平洋の漁獲インパクトが70対30になるよう主張していた。
合意案では、80対20案でも70対30案でも、西太平洋側の大型魚(30キログラム〈kg〉以上)の枠の数字は同じだが、小型魚(30kg未満)については80対20案だと6%の減枠にとどまるところ、70対30案だと20%の減枠となる。他方で東太平洋側(枠で小型魚・大型魚の区分を設けていない)では、80:20案では小幅(8%)の減枠、70:30案では25%の増枠となる。つまり、米国やメキシコが推す70対30案だと日本などは小型魚の漁獲を大幅に減枠する必要があり、米国やメキシコは全体として大幅な増枠となる。
とは言え、米国やメキシコは、70対30案が採用された場合に得られる東太平洋側の増枠自体には、さほど強い経済的利害があるようには必ずしも見えなかった。というのも、米国は商業漁業によるクロマグロ漁獲をほとんど行っておらず、東太平洋側で商業漁業を行っているメキシコは、漁獲量が多いとかえって値崩れがするため、大幅な増枠は望んでいないと以前に発言していたからである(IATTC-WCPFC合同作業部会(2024)報告書, p. 6)。
もし東太平洋での増枠をそれほど望まないなら、一定の譲歩をするのではないか、とも思われた。ところが最終日になってメキシコが「本国からの指示により、西太平洋と東太平洋の比率は75:35がレッドラインである」と突然意見を覆したため、合意に至ることができなかった。
会議決裂を受け、7月30日に山下雄平農水副大臣が急遽メキシコを訪れて担当相と二国間協議を行い、この場でメキシコが関係国調整案を支持する旨を表明、先日再度オンラインで開催されたWCPFCとIATTC合同のクロマグロ作業部会では、漁獲枠を決めるための枠組み案がようやく合意された。ここでは、28年までは懸案の漁獲インパクトを西太平洋と東太平洋で80対20に存置するも、29~30年は79対21、31~32年は78対22とメキシコなどの東太平洋側に漸増する案でまとまった。合意された枠組み案に基づくと、西太平洋側全体で大型魚について25%増枠(小型魚は6%減枠)の道が開けたことになる。
