2026年7月23日(木)

Wedge OPINION

2026年7月23日

 半導体エンジニアとしてNEC、ルネサスエレクトロニクス、外資系半導体コンサルティング企業などを経て、現在、AI・量子コンピューティング時代における半導体セキュリティー技術を開発するディープテック企業、蘭・Fortaegis Technologies JapanのVice Presidentを務める杉山和弘氏に、株高に沸く半導体業界と、日本の「勝ち筋」について聞いた。(聞き手・構成/編集部 友森敏雄)

6月、エヌビディアのジェンスン・ファンCEOが訪問して沸いた台北の街角にあるインテルの最新CPUの広告(CHENG CHIA HUANG/GETTYIMAGES)

編集部(以下、──) 東芝からスピンオフしたNAND型フラッシュメモリー専業のキオクシアの株価が高騰している。

杉山 「生成AI」が発達する中で、より大量の情報を処理するためにDRAM(短期記録)を積層させたHBM(広帯域メモリー)の需要がデータセンター向けに伸びた。ここにきて、「エージェント型AI」が進化し、長期間の記録を保存するNAND型の需要が増えた。韓国・サムスンやSKハイニックスがDRAMの製造を増やす中で、NAND専業のキオクシアへの需要も増えた。

 さらに、キオクシアには独自の技術がある。CMOS directly Bonded to Array(CBA)技術だ。技術的に、ロジック半導体とメモリー半導体を1枚のウェハー上で一体に作るのは難しいが、それぞれ別のウェハーで製造し、2枚を直接貼り合わせる独自技術「CBA」を確立した。これによって消費電力を抑えながら処理スピードを上げられる。AIデータセンター向けに非常に付加価値が高く、これも業績を伸ばしている要因の一つだ。

 この種のCMOS直接接合(ウェハー貼り合わせ)を量産レベルで実現できているのは、キオクシアと、「Xtacking」と呼ぶ同種技術を持つ中国・YMTC(長江存儲科技)の実質2社で、サムスンやSKハイニックスは追随段階にある。

──AMD(米・アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)、インテルなど、CPU(中央演算処理装置)の設計・製造会社の株価も急上昇した。

杉山 これまでのAIに求められるのは「学習」がメインだった。そこでは、GPU(画像処理装置)のような短時間で大量の計算をすることができるチップが求められた。一方で、先述した「エージェント型AI」が発達してきたことで、より自律的に「推論」することが求められる。ここでは、パソコンやスマホの頭脳としても使われているCPUがより多く求められるようになった。

 少し前まで、AIを動かす際に使用されるデータセンターのサーバーでは、GPU8個に対して、CPUが1個という割合だった。米・インテルのリップブー・タン最高経営責任者(CEO)は、「この割合が1:1に近づく」と述べている。学習はGPU中心だったが、自律的に動く「エージェントAI」では、推論やシステム全体の制御を担うCPUの役割が増す。だからCPUへの需要が高まっている。同社はファウンドリー事業でつまずいたが、最先端プロセスである1.8ナノへの評価が高く、再びアップルが自社設計チップをインテルに発注するのではないかという報道もあるなど、復活の兆しが見えている。

──日本のAI産業は立ち遅れているように見える。

杉山 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長がフランスで、AI用データセンターに14兆円を投資するという報道があった。ただ、ハード・ソフトだけではなく、アプリケーションの部分でも日本企業の存在感は薄い。逆にいえば、アメリカが超独走状態だ。日本のガバメントクラウドも、アマゾン、グーグル、マイクロソフト、オラクルとアメリカ企業に独占されていた。今年に入ってようやく、さくらインターネットが正式に認定された。

 さらに世界では「ギガワット級データセンター」や垂直統合で半導体まで自前でつくろうという流れの中、日本は立ち遅れている。

 デジタルインフラへの投資が重要だが、日本のインターネット回線がどれだけ整備されても、クラウドサービスを運営するプレイヤーがいなければ意味がない。NTTが頑張っても、その先のクラウドベンダーがいない。NTTのように光通信の研究をやっている会社もあり、期待される一方で、設備やインフラをつくるだけでなく、それらを活用してビジネスをして利益を生むプレイヤーが育たなければならない。日本には今、サプライチェーンを国内で構築するチャンスがある。ただ、現状では、機器製造は台湾などに握られ、日本は材料を供給するだけという状況だ。そこを変えていくためにも、クラウドを運営する会社を育てていかなければならない。


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