今後の課題
ただ、増枠が得られたとしても、今後の課題は残っている。
第一は、国内での配分をどうするか、という課題である。漁獲枠の配分は基本的に過去の実績を基準にしている。ということは、漁獲実績が大きな大規模漁業者に有利になってしまう。
この資源を評価している北太平洋まぐろ類国際科学小委員会(ISC)の報告書によると、90年代以降、大規模漁業である巻き網漁業者が0~1歳魚を対象とした漁獲を行ったことが、資源に最も大きなインパクトを与えたとしている(ISC太平洋クロマグロ資源評価報告書(2024), p. 66)。これはちょうど資源が大きく減少した時期と重なる。
沿岸小規模零細漁業者にしてみれば、過去に最も多くのクロマグロ資源を漁獲し、ゆえに資源を減少させた責任が最も大きい大規模漁業者がなぜ相対的に大きな枠を有して、自分たちには少ししか漁獲枠が与えられないのか、と不満を有するであろう。枠がないため定置網に入ったクロマグロを逃がさなければならないという事例が現在後を絶たない。こうした問題を解決するためにも、枠の配分方法を再考する必要があるだろう。
第二が、監視取締措置の整備である。太平洋クロマグロと類似の資源としては、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)で管理されている大西洋クロマグロ、みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)で管理されているミナミマグロがあるが、いずれもICCATもしくはCCSBTの下での監視取締措置が整備されている。
WCPFCにおいても中緯度海域では監視員制度などが整備されているが、太平洋クロマグロではこれがない。いくら漁獲枠を資源評価に基づいて設定したところで、過少報告などによって枠が順守されなければ、枠設定の意味は大きく減じてしまうし、将来予測にも影響がでてきてしまう。
特に問題なのは枠が上限に達してしまった、あるいは上限に近づいていることなどを理由として、漁獲した魚を放流・投棄し、これを漁獲枠にカウントしないという可能性である。放流した魚が死んでしまった場合は、それは漁獲同様資源に影響を与える。現在ISCが実施している資源評価では、投棄に関する信頼に足るべきデータがないため、投棄量を漁獲量の5%と見做して資源評価・予測を推定している。
しかし投棄の割合が大きかった場合、将来予測にも影響が出てきてしまう(ISC太平洋クロマグロ資源評価報告書(2024), p. 10, 13-14, 72, 74-75)。漁獲量を正確に記録し、採択された管理措置を適正に執行するためにも、WCPFCの下での監視取締措置の早急な完成が望まれよう。
